若がえり、脳が冴え、免疫力もアップさせる──「宅トレで20歳の体型を目指す方法」を坂詰真二さんに聞く
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若がえり、脳が冴え、免疫力もアップさせる──「宅トレで20歳の体型を目指す方法」を坂詰真二さんに聞く

2020年06月29日

自宅にいながらにしてジムに通うのと同等の効果が得られるトレーニング法「宅トレ」

4月の発売以降、多数のメディアに取り上げられ、その認知度をジワジワと上げている書籍、『今日から自宅がジムになる 「宅トレ」』(カンゼン)。

この本は、自宅で簡単に、ジムに通うのと同等の効果が得られるトレーニング法・「宅トレ」のノウハウをまとめたものです。

 

今日から自宅がジムになる 宅トレ

『今日から自宅がジムになる 「宅トレ」』

  • 著者: 坂詰真二
  • 発売日: 2020/6/9
  • 発行所: (株)カンゼン 価格:1,540円(税込)

 

これまで、①お腹のストレッチ、②胸のストレッチ、③太もも前の筋トレ、④太もも裏とお尻の筋トレ、⑤エア・ウォーキングと、5回にわたって具体的なトレーニング術を紹介してきたこの企画。

最後となる今回は、著者である坂詰真二さん本人へのインタビュー。

 

大手スポーツジムに勤務していた坂詰さんが、あえて「宅トレ」を開発したキッカケとその目的、加えて、なぜいま、そして、これからの時代に「宅トレ」が必要なのかについてお話をうかがいました。

 

なぜ日本人はジムを退会してしまうのか

 

──ジムに通うことなく同等のトレーニングができる「宅トレ」という発想は斬新だと思いました。「宅トレ」を思いつくにいたったきっかけ、とトレーニングのノウハウとして確立するまでの経緯を教えてください。

 

坂詰真二さん(以下・敬称略):私は、若い頃はフィットネスクラブでの指導、アスリートの指導が中心でしたし、私自身が若い頃からトレーニングを習慣にしていましたので、ジムでのトレーニングが当たり前で、そのノウハウをまとめることに時間を費やしていました。

 

▲ガチガチに硬くなったカラダをほぐし、猫背から脱却する「宅トレ」お腹のストレッチ

 

坂詰:30代になって、トレーナーの育成や各地で講演などをするようになり、ジムという場所を客観的に見るようになって、ジムがある意味、一般的ではない、特別な環境であることを痛感するようになったんです。

 

 

──「ジムは特別な環境」とはどういうことでしょうか?

 

坂詰:90年代のフィットネスブームから今に至るまで、日本国内における成人のジム参加率は5%程度でしかありません。ジムの敷居が高く感じている人や、入会したものの、ジムの環境が苦手、あるいは苦痛に感じて退会してしまう人のほうが、ジムでトレーニングを続けているよりもはるかに多くいるんです。

 

 

──そうなんですね。実は、私も続かなくて退会した1人です。

 

坂詰:そこでジムトレーニングではなく、「特別な器具を使わずに体ひとつでできる自宅トレーニング」の最善の方法を示す必要性を痛感しました。それを試行錯誤しながらまとめ、これまでもさまざまな雑誌、書籍を通して発信してきました。その集大成にあたるのが本書『今日から自宅がジムになる「宅トレ」』(以降、『宅トレ』)です。

 

──宅トレでは「ストレッチ」、「筋トレ」、「有酸素運動」の3カテゴリから構成されています。その理由を教えてください。

 

坂詰:体力の主要な3要素は柔軟性、筋力、持久力。この3つを高め、あるいは維持することで、私たちは疲れにくく、思い通りに動かせる体を持ち続け、快適に生活することができるからです。

 

 

 

▲巻き肩や猫背の人に試して欲しい宅トレ「胸のストレッチ」

 

 

坂詰:3種類のトレーニングの効果を機能面から言うと、ストレッチは主に柔軟性を高めることに特化した運動で、筋トレは筋力を高めることに特化した運動。有酸素運動は持久力を高めることに特化した運動ですが、これらは形態、つまり見た目とも大きく関わってきます。

 

 

──どういうことですか?

 

坂詰:ストレッチで柔軟性を高めると、姿勢がよくなり、若々しい印象になります。筋トレで筋力を高めると、筋肉量が増え、基礎代謝が上がるので、体脂肪が減りやすい若い頃の体質に戻ります。また有酸素運動は、直接多くのエネルギーを消費するので、体脂肪の減少に貢献します。その結果として、姿勢がよく、適度な筋肉量があって体脂肪量が少ない若々しい見た目に変わるのです。

 

 

理想として「20歳のときの体型」を目指せ

──『宅トレ』は、ロジカルでシンプルなトレーニング内容に加えて、人体と運動に関する専門的な知見がわかりやすく書かれていて参考になります。本の中に「理想の体型は20歳のときの体型。そこに近づくには運動するしかない」とありましたが、どういうことですか?

 

坂詰:坂詰:私たちの体型を決める最大の要素は「筋肉量」と「体脂肪量」の2つです。私たちの体を構成するさまざまな臓器・組織は誕生時から少しずつ成長し、ほぼ20歳でピークを迎えます。筋肉量も同じ。20歳以降に筋トレを行って増やすことはもちろん可能ですが、基本的に誰しも、20歳までに十分な筋肉量を獲得します。

 

 

▲カラダのなかで一番大きい筋肉「大腿四頭筋」を鍛える宅トレ

 

 

坂詰:一般的に20歳頃までは学校が生活の軸であり、金銭や時間の制約もあって、適度に運動して適度に食べているために、極端に体脂肪が増えることはまれです。
この2つの要因によって、20歳頃は、誰もが十分な筋肉量と、適度な体脂肪量のある「引き締まった体型」を備えていますし、中高年時と比較して、個人差が非常に少ないのです。

 

──それで、20歳頃の体型が、トレーニングの1つの目標となるわけですね。肉体の疲労について書かれた部分も気になりました。「疲労には『静的疲労』と『動的疲労』があり、静的疲労は動いて疲労物質を取るしかない」と書かれていますね。デスクワーク中心型の現代のビジネスパーソンの多くを悩ませているのがこの「静的疲労」ということですが?

 

坂詰:昭和50年代頃までは、仕事にしても家事にしても体を使う時間が長く、疲労の原因は体を動かすことによるエネルギーの消費がもたらす動的疲労でした。
ところが、現代の日本では機械化と自動化、とりわけITによって生活が便利になって、体を動かすことなく労働も消費もできるようになり、椅子に座ったまま長時間同じ姿勢を続けることが極端に多くなりました。その結果、動的疲労が減少するのに反比例するようにして静的疲労が増えたのです。

 

──なぜ、動くことで静的疲労が取れるのでしょうか?

 

坂詰:私たちの臓器や組織を構成するのは細胞で、その細胞は血液を介して送られる栄養素と酸素を消費して活動し、二酸化炭素と老廃物を再び血液を介して体外に排出します。
血液は心臓の強い圧によって全身の細胞に向けて送り出されますが、末端に達するころには、その圧はほぼゼロになってしまいます。細胞に行き渡った血液を心臓に戻すためには、筋肉が伸び縮みするポンプのような働き(ミルキングアクション)が必要です。

 

──なるほど。

 

坂詰:静的疲労は体を動かさないことで起こりますから、動的疲労とは異なり安静にしても改善しません。これを解消するには、積極的に体を動かして血液の戻りをスムーズにするしかないんです。

 

 

──運動不足が原因の疲れ=静的疲労。まさにリモートワーク 中心の生活になったビジネスマンには大きな悩みだと思います。それを解消するのが「宅トレ」だということですね。

 

トレーニングで免疫力を上げる

 

──本の中に、「一般的に筋力や持久力、柔軟性など行動体力が高い人は、細菌やウイルスに対する防衛体力も高い傾向にある」とあって、時勢的にも気になりました。体の筋力や柔軟性とウイルスに対する防衛体力には関係があるんですね。

 

坂詰:「防衛体力が高い」ということは「体を動かしている」ということなんです。体を動かしている人はそうでない人に比べて筋肉量が多い。筋肉は運動装置であるとともに熱発生装置でもあるので、筋肉量が多いと基礎体温が上がります。
免疫を担う細胞は体温が低いと働きが弱まる傾向があるため、十分な筋肉量があって体温が適正であると、免疫細胞が適切に働いてくれるわけです。

 

──なるほど、そういうことですか。

 

坂詰:また、近年指摘されているとおり、腸と免疫機能には深い関りがあって、腸内環境が良い人は免疫力も高く、感染症にかかりにくく、かかっても重症化しにくいことが明らかになっています。
運動中は体が上下左右に動くことで、物理的に腸が刺激され、腸内の滞留物の移動が促されます。そのため、運動をすると便が滞留しにくくなる。このことが腸内環境を整える一役を担っているわけです。

 

▲大殿筋とハムストリングスに効く宅トレ

 

 

 

──なるほど。

 

坂詰:加えて、ストレッチには、自律神経の交感神経の働きを抑えることで心理的ストレスを和らげるリラクセーション効果があり、これも免疫機能の正常な働きを促す効果があると考えられます。
座るか寝るかの楽な姿勢で、痛みを感じない程度の強さで、ゆっくりと呼吸をしながら、複数のストレッチ行うことでリラクセーション効果が得られます。『宅トレ』では「リラックス系ストレッチ」としてまとめています。

 

──有酸素運動はどうでしょうか?

 

坂詰: 有酸素運動のようにリズミカルな運動の実施中には気持ちの安定をもたらす、脳内の神経伝達物質「セロトニン」が増え、やはりリラクセーション効果があると言われています。毛細血管が増えるので、免疫細胞も全身に巡りやすくなります。

 

 

「宅トレ」=運動には肉体を若返らせる効果がある

 

──「運動には肉体を若返らせる効果がある」とありますが、そうなんですか?

 

坂詰:「老化」とは「成長で獲得した体の機能や形態を少しずつ失っていく」ということですね。これは自然な流れで、私たち人間だけではなく、すべての動物、もっといえばすべての生命に共通する定めです。
しかし、私たちは自然の流れに逆らう知恵があります。失われる体力は獲得する努力、すなわち、トレーニングによってプラスマイナス0にできる。つまり、維持することが可能なのです。

 

──トレーニングによって老化のスピードを遅らせることができる。

 

坂詰:筋肉量の減少は筋トレで、呼吸循環器系の機能の衰えは有酸素運動で、狭くなる関節可動域(柔軟性)はストレッチで、それぞれ維持することができます。体は脳の指令や調整なしでは動くことができませんから、運動中は脳の働きも活発になります。つまり運動は、脳の認知機能維持にも役立つのです。

 

──「脳を鍛えるには運動しかない」と唱える専門家もいますものね。筋肉を使わないと、廃用症候群によって、筋肉量が1日1%減ると聞いたことがあります。本当でしょうか?

 

坂詰:私が計算したところでは、1.0%の減少は極度に日常生活運動量が落ちている場合、あるいは高齢者の場合で、一般的な生活をしていれば、20代から50代までは年率0.5%程度の減少で済むと考えられます。それでも、20歳の頃と比較すると、40歳で80%程度、50歳で75%程度まで落ち込むことになります。
仮に20歳時の体重が70kg、骨格筋量が30kgである場合、重量にすると40歳で6kg、50歳で7.5kgもの筋肉が失われることになるわけです。

 

──40代で2割減ですか。意外と減るものですね。筋肉量を戻すにはどのくらいの時間が必要になるのでしょう?

 

坂詰:1kgの筋肉をつけるには、アスリート並みの厳しい筋トレをしても1ヵ月かかりますから、一般的な筋トレの場合には3か月程度かかると考えられます。つまり1年で4kg程度の筋肉を獲得、回復することは可能です。ししたがって6kg減少している40歳なら1年半、7.5kg減っている50歳なら2年近くを要します。

 

──けっこうな時間ですね。

 

坂詰:ずいぶんと時間がかかるように思われるかもしれません。でも、20年で失ったものを1年半で取り戻せるわけですから、実は効率はいいんです。

 

 

──小説家の村上春樹さんは、30歳の時、書くための体力を維持するためにマラソンを始めたと、『走ることについて語るときに僕の語ること』という本の中で書いていました。たとえば、40歳で運動を始めることで、40歳時の体力を長期間維持することは可能なのでしょうか?

 

坂詰:体力を上げるには相当な努力が必要ですが、維持するだけならさほど難しいことではありません。たとえば有酸素運動の場合、持久力を高めるには週に2~3回実施する必要がありますが、維持だけであれば週1回でも可能です。

 

 

──週1回なら続けられそうです。

 

体力は何歳からでも高めることができる

坂詰:持久力に限らず、筋力も柔軟性も、体力は何歳からでも高めることができます。ただし、年齢が上がるほど体力は衰えているので、20歳レベルに戻そうとすると、そのぶんの長い期間と努力が必要になってしまいます。運動の必要性に、早い時期に気づき、早く取り組み始めるほど、早く目標に達することができます。

 

──運動することでQOLが向上することは頭ではわかっているのですが、三日坊主になってしまって……。克服するコツがあれば教えてください。

 

坂詰:運動を楽しめる人というのはごく一部で、運動はそれほど楽しいものではない、ということが前提です。カラダを動かしたくないからこそ、このように人間の文明は発達してきた訳ですから、乳幼児期や児童期は別として、運動そのものに対する欲求が低いのは当然のことなのです。
しかし便利な生活と引き換えに体の機能や健康が失われるのは明らかで、その代償として、いわば歯磨きのような義務として行うべきなのが運動なんですよ。「歯を失ったら怖い」のと同様に、「ちゃんと体を動かせなくなったら怖い」という意識、動機をしっかり持つことがスタートになります。

 

──そうですね。最近はあらためて健康的なカラダを保つことの重要性を感じます。

 

坂詰:それから、運動が三日坊主になりやすい一つの理由として、「最初に頑張り過ぎてしまう」ことがあります。運動から離れているほど体力は衰えているのですが、記憶の中の体は若いのでギャップがあり、その結果頑張り過ぎて激しい疲労や筋肉痛に見舞われ、それが運動に対する意欲を低下させやすいのです。
スタートからの1か月はアイドリング期間と考え、種目数、回数、セット数などを抑えて少しずつ体を慣らしていきましょう。

 

 

▲自宅でできる有酸素運動「エア・ウォーキング」は動脈硬化や高血圧の予防にも効果的

 

 

──坂詰さんのお話をうかがって、なんだか気が楽になりました。「鍛える」とか「頑張る」とかって、肩肘張らないくらいなほうが、むしろ良い結果を出せそうです。

 

坂詰:新型コロナの影響もあって社会が大きく変わり、自分自身で意識的に健康な体をつくって管理する重要性がますます高まっています。充実した人生のベースとなる健康な体は自分自身の努力でつくることができます。しかも正しく行いさえすれば、誰でも平等に十分な効果を得ることができます。

 

 

──最後に、読者の皆さんになにかひと言お願いします。

 

坂詰:ジムに行くのも一つの選択肢です。でも人に見られながら体を動かしたくない、ジムの雰囲気が苦手という方は是非「宅トレ」を取り入れてください。本書を読んで実行して頂ければ、ジムトレと同じ効果宅トレでも十分に得ることができます。自分の都合に合わせて好きな時間にできますし、服装などを気にする必要もありません、初期費用も維持費もゼロです。

 

──コストパフォーマンスも高い、と。

 

坂詰:好きなことを好きなときにできる、充実した人生は健康な体があってこそ。いくらお金があっても健康でなければ人生は満喫できません。健康な体、これが何よりの財産です。皆さんの健康とゆう財産を増やし、維持、管理するパートナーとして「宅トレ」を手元に置いて頂ければ幸いです。

 

今日から自宅がジムになる 宅トレ

『今日から自宅がジムになる 「宅トレ」』

  • 著者: 坂詰真二
  • 発売日: 2020/6/9
  • 発行所: (株)カンゼン 価格:1,540円(税込)