なぜ、性欲はなくなってしまうのか──「男性更年期障害」の真実 医学博士・平澤精一氏インタビュー
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なぜ、性欲はなくなってしまうのか──「男性更年期障害」の真実 医学博士・平澤精一氏インタビュー

2020年08月27日

最近なにかとやる気が出ない……もしかしたら「男性更年期障害」?

20〜30代は仕事もバリバリこなし、恋愛にも積極的で、趣味にも打ち込めた。

だが、40歳を過ぎたころから、急に何ごとに対しても興味が失せ始めた。

外出して遊ぶのも億劫だし、女性への興味もわいてこない。

仕事は多忙だが、中間管理職の立場にあるせいか、上司からは押さえつけられ、部下からは突き上げをくらい、日々ストレスに悩み、あげく意欲は、さらに落ちていく。

 

 

40〜50代男性で以下のような症状の経験を持つ人は、決して少なくないだろう。

 

・性欲の低下やED(勃起障害)

・抑うつ感や落胆、不安、疲労感

・記憶力や集中力の低下

・睡眠障害

・発汗やほてり

 

ずばり言おう。もしかするとそれは「男性更年期障害」かもしれない。

東京・新宿駅東口で「マイシティクリニック」を開業している医学博士・平澤精一先生は、男性泌尿器科・メンズヘルスの医師として、そんな悩みを持つ男性の治療にあたっている。

 

インタビュー

平澤精一(ひらさわ・せいいち)

医師。日本医科大学卒業。日本医科大学大学院医学研究科にて医学博士号取得。日本医科大学付属病院、三井記念病院などの勤務を経て、1992年に「マイシティクリニック」を開業、現在は新宿区医師会会長も務める。健康寿命に深くかかわる「テストステロン」の研究者として、「熟年期障害」の治療、高齢者の健康を守る取り組みを数多く実践している。著書に『枯れない男になる30の習慣』(幻冬舎)、『熟年期障害』『長生きの切り札! 亜鉛チャージ健康法』(アスコム)など。

ホームページ:新宿マイシティクリニック

 

「テストステロン」が不足している男性は“枯れていく”

 

——男性更年期障害の症状として、性欲の低下やED(勃起障害)、抑うつ感や落胆、不安、疲労感、記憶力や集中力の低下、睡眠障害などが挙げられていますが、その原因はどこにあるのでしょうか。

 

平澤精一先生(以下・敬称略):まずはテストステロンの減少がその原因かもしれません。いわゆる男性更年期障害は、テストステロンの分泌が低下することが原因でおこることが多いのです。

 

 

——そもそもテストステロンとはどんなものなのでしょうか。

 

平澤:テストステロンとは、精巣から分泌される男性ホルモンのこと。骨や筋肉を発達せさる役割を持つ、男性とって必要不可欠なホルモンです。
また、冒険心や闘争心、「女性にモテたい」という活力、あるいは父親として家庭を引っ張っていく父性……つまり「男らしさ」を生み出すことにも、大きく関わっていると言われています。

 

 

——なるほど、平たく言えば「男らしさ」を司るホルモンなわけですね。

 

平澤:ところが、テストステロンは10代後半〜20代前半をピークに、次第に少なくなってくることがわかっています。さらに40代に入ると、もっと急激に落ちてきます。これは生物学上、誰でもそうで、避けられない宿命といえます。その結果、どうしても意欲、やる気、性欲などが急激に下がってくるのです。

 

 

——それにしても、同じ40代〜50代でも活力あふれる男性とそうでない男性と、個人差があるように思います。まずはどこを診断基準にしたらいいのでしょうか。

 

平澤:私たちが男性更年期障害を診断する際の問診票には、17の項目があります。まずが下の表から、皆さんがどのくらいあてはまるか、チェックしてみてください。

 

 

▼AMSスコア(男性更年期障害チェックシート)

症状 ない 軽い 中程度 重い 非常に重い
1.総合的に調子が思わしくない
(健康状態、本人自身の感じ方)
1 2 3 4 5
2.関節や筋肉の痛み
(腰痛、関節痛、手足の痛み、背中の痛み)
1 2 3 4 5
3.ひどい発汗(思いがけず突然汗が出る、緊張) 1 2 3 4 5
4.睡眠の悩み
(寝付きが悪い、ぐっすり眠れない、寝起きが 早い、疲れがとれない、浅い睡眠、眠れない)
1 2 3 4 5
5.よく眠くなる、しばし疲れを感じる 1 2 3 4 5
6.いらいらする
(あたり散らかす、些細なことにすぐ腹を立てる、不機嫌にな る)
1 2 3 4 5
7.神経質になった
(緊張しやすい、精神的に落ち着かない、じっとしていられな い)
1 2 3 4 5
8.不安定(パニック状態になる) 1 2 3 4 5
9.身体の疲労感や行動力の減退
(全般的な行動力の低下、活動の減少、余暇活動に興味が ない、達成感がない、自分をせかさないと何もしない)
1 2 3 4 5
10.筋力の低下 1 2 3 4 5
11.ゆううつな気分
(落ち込み、悲しみ、涙もろい、食欲がわかない、気分むら、 無用感)
1 2 3 4 5
12.「人生の山は通り過ぎた」と感じる 1 2 3 4 5
13.力尽きた、どん底にいると感じる 1 2 3 4 5
14.ひげの伸びが悪くなった 1 2 3 4 5
15.性的能力の衰え 1 2 3 4 5
16.早期勃起(朝立ち)の回数の減少 1 2 3 4 5
17.性欲の低下
(セックスが楽しくない、性交の欲求が起こらない)
1 2 3 4 5

 

平澤:「ハイネマンのAMSスコア」と呼ばれる、国際的に認められたこの問診チェックにそれぞれ1〜5の得点をつけてみてください。その合計点が27~36点なら軽症、37~49点なら中等症、50点以上なら重症という診断になります。

 

 

——かなりあてはまる項目があります。うーむ。

 

平澤:「睡眠の悩み」「いらいらする」「人生の山は通り過ぎたと感じる」などの項目がありますが、まずチェックしていただきたいのが最後の1項目「性欲の低下」です。この項目の程度(点)が「5」の場合、つまり「非常に重い」という方は、注意が必要です。

 

 

——やはり性欲の極端な低下を感じたら注意が必要なんですね。

 

平澤:それと、男性更年期生涯が厄介なのは、症状がうつ病と酷似していること。事実、男性更年期と思わず、精神科の門を叩く人も多いんです。そこでうつ病と診断され、プロラクチンというホルモン分泌が高まる副作用のある抗うつ剤を処方されると、その結果、テストステロンの生成が抑えられていまいます。これではかえって悪循環になってしまいます。



 



性欲が減退してしまう理由

 

——うつ病と男性更年期障害は症状が似ている。

 

平澤:うつ病とLOH症候群(※加齢男性性線機能低下症候群=勃起しない、性行為ができない)とは、いずれも男性更年期障害の症状を呈すため、鑑別が難しいのです。
しかし、精神科に行ってプロラクチンが高くなる副作用のある抗うつ剤を処方されてしまうと、プロラクチンは授乳・母乳などを促す乳汁分泌ホルモンですから、いわばカラダが「女性化」してしまう。女性化すると、男性が本来持つ積極性や攻撃性、支配欲が失われ、性欲も著しく減退してしまうというわけです。

 

 

——それが性欲の低下にもつながってくる、と。

 

平澤:

吐き気止めの胃腸薬などのなかにも、プロラクチンが高まる副作用のある薬があります。そうした胃腸薬を長期間にわたって飲み続けていても、同じような副作用に蝕まれることになってしまいます。ストレスを抑えるために知らず知らず恒常的に胃薬を飲んでいる方も多いでしょう。

 

 

——ストレスからくる胃痛を抑えるため、胃薬を常用している男性も多そうです。

 

平澤:それから、精子の数そのものの減少という深刻な問題もあります。
性欲減退のもう一つの大きな要因に、亜鉛の不足もあげられます。

 

 

和食中心の食生活がかえって亜鉛不足を招く

 

——亜鉛の不足ですか。

 

平澤:亜鉛は別名「セックスミネラル」といわれますよね。これが足りない人には、比較的若い時期から男性更年期の症状が現れやすい。
じつは日本人は先進国の国民のなかで、亜鉛の摂取率が非常に低いことで知られています。その原因は和食中心の食生活にあると言われているんです。

 

 

——和食では充分な亜鉛が摂取できないと?

 

平澤:実は和食は、亜鉛を内含した食材を使用した料理が少ないのです。
それでも男性の場合、若いころは洋食を好んで食べる傾向がありますよね。ですが、加齢とともに脂っこい食事を避け始め、健康に良いと評判の和食にシフトしてしまいがちです。
また、亜鉛は小腸で吸収されるのですが、40代を過ぎたストレス過多の状態だと、小腸の機能低下とともに亜鉛を吸収する力も衰えていることも多い。せっかく亜鉛を摂取しても、これでは効果が出づらいんです。

 

日本人男性の精子の数が減少している

▲著書『長生きの切り札! 亜鉛チャージ健康法』でも亜鉛の摂取を勧めている

 

——亜鉛の豊富な食材を積極的に摂るべきなんですね。

 

平澤:男性更年期の予防には牡蠣、レバー、ナッツ類、チーズなど、亜鉛を多く含んだ食材が最適です。そうした点に着目し、亜鉛を多く含む食材を使った和食のレシピ本を監修したこともあります。卵かけ御飯と合わせやすい食材、味噌汁の具として手軽に使用できるものなどを使い、男性が好んで食べられる料理ばかりです。

 

 

——日本人男性の精液に含まれる「精子」の数は減り続けているというデータもあるそうですね。

 

平澤:30年ほど前は、1mmリットルの精液のなかに6000万の精子がありましたが、現在はなんと2000万ほど。しかもこれは、生殖が盛んな年代の平均値です。日本人の不妊・少子化にも関わってくる重大な問題です。なぜ精子が減少しているのか、原因は不明ですが、亜鉛不足は要因の一つと考えていいでしょうね。

 

 

 

とはいえ、亜鉛を補うのは簡単ではない。亜鉛が不足している人が1日500〜600gを毎日、数カ月摂取しても、体内の内含率はわずかしかアップしないという。

それでも「継続は力なり」。辛抱強く続けていく以外に、近道はないのだ。

テストステロンと亜鉛の不足……これが日本人男性の性欲減退の原因のひとつだろう。

 

では、どう改善すれば、いつまでも性欲も活力も旺盛な「枯れない男」でいられるのか?

次回の第2回以降、その具体的方法を平澤先生に伝授してもらうことにしよう。

 

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