なぜ現代人は「猫背」や「巻き肩」になりやすいのか。元プロボクサーの整体師に学ぶ「猫背改善法」
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なぜ現代人は「猫背」や「巻き肩」になりやすいのか。元プロボクサーの整体師に学ぶ「猫背改善法」

2020年10月23日

ストレッチは猫背を改善する方法の1つ

多くの人の不調の原因にもなっている猫背の姿勢。

正しい姿勢が崩れると、肩や腰、そして自律神経にも影響を及ぼすのだそう。

カラダチャンネルでは、埼玉県志木市「笑顔生活治療院」代表・荒川拓郎先生に、猫背を解消するストレッチ方法を教わりました。

 

 

荒川先生は理学療法士の資格を活かし、病院でリハビリを必要とする患者さんのサポートをされていました。

その後はご自身で整体院を開業、現在はさらに多くのカラダの悩みに応えるため、治療院を通じて訪問マッサージを提供しています。

また、元プロボクサーでJCB認定ボクサーライセンスを保有しているという一面もあります。

 

 

さらに今回は、荒川先生がカラダについて深く勉強し、治療院を始められたきっかけ、猫背の原因や改善方法についてもお話を伺いました。

 

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猫背になりやすいライフスタイル──長時間のデスクワークは危険

──本日は「猫背」をテーマにお話を伺いたいです。そもそも「猫背」とはどういった状態を指すのでしょうか。

 

荒川拓郎先生(以下・敬称略):「猫背」とは円背(えんぱい)とも言われ、頭や顎が前に突き出し、かつ脊柱が構造的に変化している状態です。猫背になる理由は人それぞれではありますが、大きな理由は2つ考えられます。
1つは加齢。年齢を重ねるにつれて「抗重力筋」が減ります。この抗重力筋は、運動などカラダを動かしているときに働くわけではなく、無意識に姿勢を保持するときに働く筋肉のこと。これが減るとカラダを上手く支えられなくなり、徐々に猫背になってしまいます。

 

▲加齢とともに「抗重力筋」が減ると、前屈みの姿勢になってしまう

 

──なるほど。年齢を重ねるにつれて猫背になる理由が分かりました。

 

荒川:加齢による猫背は骨なども影響しますので、「抗重力筋」については理由のひとつとして捉えてくださいね。
2つめは、近年のライフスタイルの変化。世の中の利便性が上がって日常の活動量が減り、パソコンやスマートフォンが普及した影響で悪い姿勢を固定する時間が増えました。運動不足は筋肉を固くし、長時間のパソコンの使用は骨盤を後傾させ、前屈みの姿勢になりやすいです。

 

──IT化が進んでいる現代人のライフスタイルを送っていると、若い人でも猫背になりやすいと言えそうですね。

 

荒川:そうですね。とくにデスクワークの人は猫背になりやすい環境なので注意が必要。パソコンやスマートフォンを使用する場合は、定期的に画面から目を離してカラダを休めることが大切です。
ちなみに、猫背の人に多い「巻き肩」は、耳線よりも肩が前に出ている状態。「猫背」はカラダ全体のこと、「巻き肩」はその肩の状態のみを指します。

 

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猫背は呼吸が浅くなりやすい

──では、猫背によって起こるカラダの変化について教えてください。

 

荒川:猫背により姿勢の変化が起こると、体重の重心位置が変わってしまいます。それによってさまざまなカラダの不調が現れやすくなります。
例えば、患者さんの悩みにも多い肩コリや腰痛。また、猫背の姿勢は呼吸が浅くなりやすいです。呼吸が浅いと交感神経が優位になるので寝つきが悪くなることもあります。睡眠の質が気になる場合は、一度自分の姿勢に目を向けると良いかもしれません。

 

──たしかに前屈みの姿勢になると、息がしづらいですね。

 

荒川:実際に試してみるとわかりますよね。猫背の影響で呼吸がしにくいと感じたら、胸郭を意識して、口をすぼめて呼吸をしてみると改善されますよ。とくに高齢の方は呼吸が浅くなりがちなのでぜひお試しください。

 

 

──つまり猫背を改善すれば、「カラダの不調」を今より軽くできる可能性があると。

 

荒川:カラダの不調の原因はさまざまなので言い切ることはできませんが、今の状態から良くなる可能性はあります。また、猫背の改善は怪我や病気の予防にもなりますので、今後のカラダのトラブルを減らすためにも治しておくのが良いでしょう。

 

 

猫背のチェック方法とは

──「猫背」について教わりましたが、逆に「猫背ではない正常な状態」とはどういったことを指すのでしょうか。

 

荒川:「猫背ではない正常な状態」とは、耳→肩→背骨→股関節→膝→足部の中心に線が通っている状態のことですね。カラダ全体が自然に真っ直ぐであるイメージです。

 

 

▲背筋が真っ直ぐ伸び、カラダに負担がかかっていない状態

 

▲耳→肩のラインが一直線の状態がベスト

 

──なるほど、わかりました。では、自分で「猫背」を見分ける方法はありますか。

 

荒川:まわりの人に自分のカラダを横から見てもらってください。頭や顎の位置が前に出ている人は「猫背」であると言えます。鏡に立って自分の姿を見るときは自然と姿勢を正していることが多いので、なるべく他の人に確認してもらってください。

 

▲首から上肩よりが前に出ることにより、肩も丸まってしまう

 

猫背解消ストレッチを習慣化しよう

──それでは、根本的に猫背や巻き肩を解消するには、どうすれば良いのでしょうか。

 

荒川:カラダの使い方の悪い癖を治すことが大切ですね。猫背の人はすでに前のめりの姿勢が習慣になってしまっているので、ストレッチで筋肉の柔軟性を向上しましょう。すぐに完璧に猫背が治るわけではありませんが、継続することで徐々に改善されていくはずです。

 

 

①脚は腰幅に開き、両手は肩の下より少し外側の位置に置いて、四つん這いの姿勢になります

 

②目線はおへそを見るようにゆっくりと首を下に動かし、同時に背中を丸めます。お腹を背骨のほうに引き込むイメージ

 

──猫背解消にはストレッチが有効なのですね。実際に行う際の注意点はありますか。

 

荒川:無理をしないことが一番のポイント。カラダが痛みを感じる場所まで伸ばしてしまうと、筋肉は伸びずに固まってしまうのです。
せっかくストレッチをしたのにカラダにとって逆効果なんて悲しいですよね。自然に呼吸ができる範囲でゆっくりとカラダを伸ばすことが効果的です。なにごともバランスが大事なので、決して頑張りすぎないでくださいね。

 

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「良い姿勢」を保つために大事なこと

──さっそく実践したいと思います。ストレッチ以外で気をつけるべきことはありますか。

 

荒川:猫背になりにくい環境を作ることは重要です。例えばデスクワークの方は、自分に合う高さの椅子や机で作業をすると良いですね。「良い姿勢を保とう」という意思だけでは続かない場合もあると思いますので、アイテムに頼ることは大事です。
また、猫背を防ぐ補正下着を活用することもおすすめです。ほかには、やはり健康なカラダを維持するためには適度な運動が必要です。運動が苦手な方は、気軽にできるウォーキングから始めてみてください。

 

──猫背を改善するためには、なにか難しいことをしなければいけないのかと思っていましたが、どれも簡単にできることばかりですね。

 

荒川:カラダづくりや健康を意識すると、途端に張り切ってしまう場合は多いと思います。でも、本当に簡単なことで良いのです。基本的なことを地道に続けましょう。

 

 

──そう言っていただけて気持ちが楽になりました。ちなみに、荒川先生は姿勢がとてもきれいですが、実践されていることを教えてください。

 

荒川:私はカラダを見つめる時間を毎日とり、そのときの体調や状態に合わせた行動をしているんです。そのときのカラダの状態に合わせたストレッチや運動、そしてバランスの良い食事を取り入れています。
本当はこのように毎日5分でも自分のカラダの状態を観察する時間を皆さんにとって欲しいですね。カラダの不調に気が付くきっかけにもなりますから。

 

──毎日5分、自分のカラダの状態を観察する。

 

荒川:それが難しい場合は、先ほどご紹介したストレッチを隙間時間に行うことはおすすめです。手軽に筋肉の柔軟性を上げ、副交感神経を優位にすることが出来ますからね。

 

 

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無理をせず、ストレスのない方法で健康を維持して欲しい

──そもそも荒川先生は病院勤務を経験した後に整体院を開業し、現在は治療院の代表をされているそうですね。

 

荒川:はい。病院では理学療法士の資格を活かし、リハビリの患者さんをサポートしていました。リハビリを通じて少しずつカラダの調子が良くなっていったり、その度に患者さんからお礼を言っていただける仕事はやりがいがありましたね。

 

──理学療法士を目指したきっかけは何だったのでしょうか。

 

荒川:私は幼いころからアトピーや喘息に悩まされ、カラダが弱かったんですよ。そのため健康への関心は人一倍ありました。
大学生の頃に「理学療法士」という資格を知り、実際に仕事風景を見学させてもらって興味を持ったのです。カラダの不調に悩む方の気持ちはよくわかるので、多くの方の健康、そして人生に役立ちたいと思いました。

 

──そのような病院勤務の経験を活かし、現在は治療院を通じて地域の方の健康増進に尽力していると。

 

荒川:はい。代表を務めている治療院では「訪問マッサージ」を提供しています。当院の訪問マッサージとは、医療保険が利用できるマッサージのこと。医師からの同意が必要です。ご高齢の方やお身体が不自由な方など、ご自身の通院が難しい方のお宅や入居施設などに訪問します。

 

──療養中の方が対象ということでしょうか。

 

荒川:主に在宅、または施設にて療養中の患者さんにご利用いただいています。私自身、家族を家ではなく病院で看取ったことがあり、そのときに在宅医療について深く考えたのです。結果、私は自分ができる治療やマッサージを通して多くの方の健康に貢献できればと思い、現在の働き方を選びました。

 

──最後に、読者の皆さんに一言お願いします。

 

荒川:病院勤務や現在の治療院の経験を通じて私が伝えたいことは、どんなときも無理をしないこと。健康な状態でいられることこそが財産です。ストレスのない方法で、元気なカラダを維持していきましょう。

 

 

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取材協力

荒川拓郎(あらかわ・たくろう)

「笑顔生活治療院」代表。理学療法士。元プロボクサー。地域の方のカラダの不調や相談に乗り、それぞれの方にあったアドバイスや施術を行っている。

WEBサイト:笑顔生活治療院

 

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【参考記事】

・ストレッチングの実際 | e-ヘルスネット(厚生労働省)