好きだった俳優の名前が思い出せない!?「アレアレ症候群」と認知症の関係とは【糖質の過剰摂取にご注意!】
  • Hatena
  • Twitter
  • Facebook
  • Instagram
  • YouTube

好きだった俳優の名前が思い出せない!?「アレアレ症候群」と認知症の関係とは【糖質の過剰摂取にご注意!】

2022年06月28日

人の名前が思い出せない、好きだった俳優や女優の名前が出てこない、とっさに漢字が思い出せないなど、「イメージは頭の中に浮かぶのに、該当する言葉が出てこない」という経験がある人は多いのではないでしょうか。

アレアレ症候群」とは、「あれあれ、あれって何だっけ?」「あれあれ、あれ……誰だっけ?」「あれあれ、あそこどこだっけ?」などと言ってしまうことから名づけられたもの。

 

・好きだった俳優の名前や映画のタイトルが思い出せない

・大事な会議や商談の場で、取引先の担当者の名前が出てこない

・昨日食べた昼食がなんだったか思い出せない

・自宅から外出した後に、部屋の電気を消したかどうか思い出せない

 

こんな症状に思いあたることがあったら、それはきっと「アレアレ症候群」の典型的な症状。そして、ひょっとしたら軽度認知症(MCI)や認知症の前段階かもしれない――。

 

今回、このアレアレ症候群についてお話を伺ったのは、糖質制限食の第一人者で、糖尿病治療に長年携わり日本でも早くから糖質制限食を実践・啓蒙されてきた江部康二先生

江部先生によると、アレアレ症候群が悪化したり、また軽度認知症(MCI)や認知症にまで進んでしまう主な理由は「食事」。そして、食事による「糖化」と「酸化」が引き起こす「老化」に原因があるのだと言います。

 

インタビュー

江部康二(えべ・こうじ)

内科医、漢方医。京都大学医学部卒業。一般財団法人高雄病院理事長、一般社団法人日本糖質制限医療推進協会理事長。糖尿病治療における糖質制限食の体系を確立したパイオニアで、自身も02年に糖尿病であることが発覚し、克服する。糖質制限食による糖尿病治療、漢方治療、アトピー・アレルギー治療を三本柱として患者の治療にあたる。『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』(東洋経済新報社)で糖質制限食を初めて全国に紹介し、医学関連書籍としては異例の約20万部のベストセラーを記録。他にも『名医が考えた 認知症にならない最強の食事術 』(宝島社)、『専門医がゼロから教える! 医学的に正しい「糖質制限」見るだけノート』(同)、『主食を抜けば糖尿病は良くなる! 新版: 糖質制限食のすすめ』(東洋経済新報社)など著書多数。

・ブログ:ドクター江部の糖尿病徒然日記

 

後編記事はこちら▼

【アレアレ症候群】もの忘れが多い人、メタボな人は認知症になりやすい!? 「ボケないための食事術」とは | カラダチャンネル

 

そもそも「アレアレ症候群」とはどんな症状なのか。「認知症」との見分け方

※このインタビューはオンラインにて取材いたしました

 

――「アレアレ症候群」については、約8割の日本人が経験があるというアンケート調査があるようです。そもそもアレアレ症候群と認知症は、地続きのものと考えてよいのでしょうか。

 

江部康二先生(以下・敬称略):まず、臨床的にはアレアレ症候群と認知症は分けて考えたほうがいいですね。アレアレ症候群の場合は、単に加齢のための自然な老化が原因の場合も多いですし、あくまでも「自分が何かを忘れてしまった」ということをしっかり覚えていますから。

 

――たしかに、「アレ、アレ」となってとっさには言葉が出てこないけれど、何が思い出せなかったかははっきり覚えています。

 

江部:けれど、認知症になってしまうと、「何かを忘れたこと自体も覚えていない」という状態になります。たとえば、ある俳優の顔は覚えているが名前が出てこないのがアレアレ症候群で、もはやその存在ごと忘れてしまっているのが認知症。医学的にはそこに大きな差があります。ちなみに、軽度認知症(MCI)は認知症の予備軍ですが、厚生労働省によると認知症と軽度認知症をあわせると862万人いる(※)としています。これは日本人の65歳以上の4人に1人という割合です。

 

(※)参考:令和元年6月20日 認知症施策の総合的な推進について(参考資料):厚生労働省老健局

 

――たしかに、40代や50代あたりでちょっと物忘れが気になるからといって、わざわざ病院にまで行く人はぼぼいないですよね。

 

江部:ですが、問題はアレアレ症候群をほったらかしにすることです。20代や30代でも、もの忘れや日常での「アレ、アレ……?」が出やすい人と出ない人がいるわけで、「アレアレ」がよく日常的に出るようなタイプの人は、将来的に軽度認知症(MCI)になりやすい、さらに放置すると認知症になってしまう可能性が高いとも言えます。

 

 

――では、アレアレ症候群程度では済まずに、軽度認知症(MCI)と診断されてしまう場合は、どんな症状が出たときですか。

 

江部:認知症の中核症状としてよく知られているものとして「知っている道で迷ってしまう」というのが一例としてあります。また、私が診察したアルツハイマー型認知症の患者さんの例では、お金やお釣りの計算管理が出来なくなった人がいました。ものの計算ができないため、スーパーやコンビニのレジに行くときは、いつも1万円札を持っていくのだそうです。
ちなみにこの人は、糖質制限をしてみたところ、以前のように釣り銭の計算ができるようになったんですね。しかし、たっぷりの炭水化物を摂る食生活に戻したところ、また認知症の症状が出るようになってしまった。

 

――それは驚きですね。認知症と、糖質の過剰摂取には関連性があると。

 

江部:この方もそうですが、糖質制限をすると、ケトン体という脂肪の分解物が体内ですごく出てくる。そして、糖質制限をする限りにおいては、ケトン体が脳のエネルギーになるので健常の人と変わりません。ケトン体は、断食をした際、もしくは長時間の運動をした際などにも作られ、脳を始めとしてカラダのエネルギー源になる物質で、ブドウ糖がなくてもケトン体があれば問題ないのです。でも、糖質を食べると、ケトン体が下がり、その時点からリアルタイムで認知症の症状がぶり返してしまったんです。

 

――その「ケトン体」という物質には認知症を軽減する働きがあると?

 

江部:よく、「脳のエネルギー源はブドウ糖だけである」という人がいますが、これは医学的にみて大きな間違いです。脳はブドウ糖以外にも、乳酸やケトン体をエネルギー源にすることができます。ケトン体は脳のセキュリティゲートである「血液脳関門」をフリーパスで通りますので、脳の活動に大きく役立つ存在であり、脳がもっとも好むエネルギー源なのです。そして、ケトン体という物質を利用しているときの方が、かえって脳が冴えるとさえ言えるのです。

 

アルツハイマーになりやすい人々の典型例

 

――つまり、糖質制限をして、自分のカラダをケトン体優位の代謝にすることで、脳のパフォーマンスを保てるということですね。では逆に、糖質の摂取が多い人の方が、物忘れしやすい、アレアレ症候群を悪化させる確率が高いということでしょうか。

 

江部:そのとおりです。間違いないのは、認知症の70%が「アルツハイマー型」だということ。ちなみに、アルツハイマー型認知症は「第3の糖尿病」と呼ばれ、最近の研究では糖尿病の人がアルツハイマー型認知症にかかるリスクは、糖尿病でない人に比べて3倍以上という報告もあります。
糖尿病の一番の原因は糖質の過剰摂取ですが、食事や間食で過剰に糖質を摂ることで、「アミロイドβ(ベータ)」という老廃物を脳内に蓄積させてしまうことがわかっています。このアミロイドβは、アルツハイマー型認知症の原因因子とされているんです。

 

――長年の糖質過剰摂取が、脳に老廃物を蓄積させてしまう原因になると。

 

江部:またアルツハイマー型認知症になってしまう原因として注目されているのが、「AGEs(エイジス、終末糖化産物)」という物質です。このAGEsという物質がカラダに溜まってしまうということも、認知症の原因になると言われています。

 

――AGEsとは、よく老化の原因となると言われている物質ですね。

 

江部:そうです。AGEsは、カラダの中の「糖化」という現象によって生まれます。糖化とは、ブドウ糖などの糖質が加熱や体熱によってタンパク質や脂質とくっついてしまう化学反応のこと。いずれにしてもこのAGEsが脳内が溜まるほど、のちに認知症を発症しやすくなるのです。逆にいうと、このAGEsを溜めないことが認知症予防のキモになります。

 

――なるほど。では、AGEsが溜まりやすいタイプの食事とは?

 

江部:単刀直入に言えば、ブドウ糖や果糖などの糖質をたくさん摂るような食生活でしょうね。こうした単糖類は、タンパク質にへばりつく性質があります。例えば、コラーゲンという皮膚のタンパク質にへばりついて糖化が起こり、終末糖化産物=AGEsになり、シミやシワなどになります。
つまり、「糖化」が「老化」のもとになっていくわけです。 目にAGEsが溜まれば白内障、耳に溜まれば聴力低下。あるいは骨に溜まれば背が縮むということで、一般的に糖化の延長上に老化があるといえるのです。

 

アレアレ症候群の大敵――「脳の糖化」とは

 

――糖質の多い食事を摂ると、当然、血糖値も上がりますよね。血糖値の急上昇とアレアレ症候群・認知症などとの関わりはありますか。

 

江部:大いにありますね。そのメカニズムを簡単に説明すると、まず血糖値が急激に上がるような食事によって、食後に活性酸素が発生するんですね。活性酸素は、カラダの中に酸化を引き起こします。この酸化とはどういうことかというと、イメージしやすいのは鉄などの金属にできる「サビ」でしょう。サビとは鉄の表面が酸素と水によって化学反応を起こす現象のことですが、これと同じことがカラダの中にも生じると。

 

――つまり「酸化」とは「カラダのサビ」ということですね。

 

江部:健康であれば、増えすぎた活性酸素を抗酸化酵素が押さえてくれるのです。激しい運動や日常的にストレスを感じていると、どうしてもそのバランスが崩れてしまう。抗酸化力は加齢によってどうしても衰えますし、糖化によって老化が進むことで、さらに酸化を促す……という負のスパイラルに陥るんですね。
こうして酸化反応が強くなった状態を「酸化ストレス」と呼んでいますが、この酸化ストレスが継続して生じた状態になると、あるゆるガン、生活習慣病の原因にもなってしまうのです。

 

――そうすると、さまざまな不調の原因である糖質はなるべく控えた方がいいということになりますね。

 

江部:はい。糖質摂取による酸化や糖化は、今日のテーマである軽度認知症や(アルツハイマー型の)認知症の原因にもなりますし、糖尿病はもちろんのこと、がんや心血管疾患、うつ病などの精神疾患、サルコペニアや腰痛など整形外科の病気、白内障や緑内障など目の病気。さまざまな疾病の根本原因のひとつになっていると考えています。

 

▲糖質の過剰摂取が、さまざまな疾病の根本原因に

 

――実は最近、私もいわゆるスーパー糖質制限食(※)を始めて半年ほどなのですが、眼科にコンタクトレンズを新しく作りに行った時に、コンタクトの度数が下がって、視力が上がったと言われたんです。にわかには信じがたいのですが、糖質制限をすると、こうした効果もありうるのでしょうか。

(※)1日3食とも主食とされる飯やパン(糖質)をできるだけ減らし、タンパク質・脂質中心の食生活にすること。1日の糖質量は30~60g程度を目安とする。

 

江部:私自身も52歳で糖質制限を始めたときに比べたら、今の方が目が良いんです(笑)。視力と糖質制限の関係については明確な医学的エビデンスがあるわけではないので言い切れないですが、糖質制限をすることで全身の血流代謝が改善されますので、あり得る話だと思います。私は72歳で歯もすべて残っているし、聴力低下もないし、眼鏡なしで普通に広辞苑の文字も読めます。

 

――糖質の摂取を控えて「糖化」と「酸化」をなるべく回避する。さらに糖質の摂取を控えたことで全身の血流代謝が良くなるので、アンチエイジング的な観点からもカラダには良さそうですね。

 

江部:そういうことです。糖質制限をすることで、将来の認知症とか現在のアレアレ症候群がかなりの部分で予防・改善できるのではないでしょうか。

 

***

 

余計な糖質を摂らないことは、終末糖化産物(AGEs)を溜めないことにつながります。

そしてそれがアレアレ症候群や認知症予防への第一歩となるのです。

とはいえ、糖質制限といえばご飯やパンを控えなくてはいけません。これを継続するのがとても難しいということは、誰もが知っているのではないでしょうか。

後編では、糖質制限の方法や、日本人の白米への幻想、さらに医学的エビデンスのある正しい運動について指南していただきます。

 

後編記事はこちら▼

【アレアレ症候群】もの忘れが多い人、メタボな人は認知症になりやすい!? 「ボケないための食事術」とは | カラダチャンネル