Zoom、Teams、ハングアウト──なぜ「オンライン会議」だと消耗してしまうのか
2020年10月09日コロナの時代を生きる私たちにとって、リモートワークやオンライン会議はすっかり日常の一部になった。
そんな中、巷で聞かれるのは、
「オンライン会議って、なんだかものすごく消耗する」
「オンラインミーティングのあとは疲労感がハンパない」
という声だ。
筆者もまさにそう感じていた一人。
趣味で通う音楽学校が3月からオンライン授業に切り替わったのだが、これがどうにも疲れてしょうがない。
指導する側も同じだったようで、学期末を目前にしたある日、担当教授が過労で倒れてしまった。
児童教育をしている友人も、オンライン授業疲れでダウンしたと言っていた。
通勤・通学の労力はセーブできるし、自宅というリラックスできる(はずの)空間にいるのになぜ?と不思議だが、その疑問に答えてくれる記事が、イギリスのBBC.comに掲載されていたのでご紹介したい。
【参考記事・画像引用】 The reason Zoom calls drain your energy – BBC Worklife
オンライン会議はリアルよりも集中力を使ってしまう
「ZOOM会議がエネルギーを吸い取る理由」というタイトルで書かれたこの記事は、ビジネススクール・Inseadで、職場における持続的な学習法を専門とする准教授ジャンピエロ・ペトリグリエリ氏と、アメリカのクレムソン大学で職場環境やチームワーク効率について研究しているマリッサ・シュフラー准教授、2人の専門家の意見をもとにまとめられたもの。
ペトリグリエリ准教授によると、ビデオ会議はそもそも、実際に対面しているよりも集中力を要するのだという。
他者との会話では、言葉だけでなく、表情や声のトーン、話すスピード、ボディランゲージといった要素も意図を伝えるツールとなっている。
同席している場合は、発信する側も受ける側も、これらをほぼ無意識にやっているが、ビデオ会議だと両者ともより意識する必要があり、そこに注意を払うことで知らず知らずのうちに多くのエネルギーを消耗しているのだ。
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ビデオ会議で神経がすり減ってしまう理由
実際の会話では、短い「沈黙」が絶妙な「間」になったりもするが、オンラインでの会話だと、このタイムラグにイラっとする人も多いのではないだろうか。
2014年にドイツで発表された研究結果によると、オンラインでの会話中にほんの1.2秒、相手のレスポンスが遅れただけで、人は相手がフレンドリーではない、あるいはしっかり集中していない、と感じるのだそうだ。
また、ビデオ会議では、画面上に出席者の顔がズラっと並んでいるため、全員の目が自分に集中していると感じやすく、「しっかりパフォーマンスしなくては」というプレッシャーがかかって神経がすり減る原因になると、シュフラー准教授は指摘している。
「本当だったら会社に一緒にいるはずなのに」
また、「オンラインでミーティングを行う」という形式だけが疲労の原因ではないようだ。
たしかにビデオ会議やビデオチャットなら、これまでも行われていた。
現在はそれを、未知のウィルスによるパンデミック、という異質の状況下で行っていることも、疲労の引き金になっているとペトリグリエリ准教授は言っている。
「ビデオ会議を行うことは、こうした現状をまざまざと認識させられることになるのです。同僚の顔を画面越しに見ると、本当だったら会社に一緒にいるはずなのに……と思ってしまう」(ペトリグリエリ准教授)
本来、人間の社会活動の場はバラエティーに富んでいる。先生に会うのは学校、家族と過ごすのは家、友達と楽しむのはバー、といった具合だ。
ところが、とりわけもっとも制限が厳しかった頃などは、そのすべての場が一箇所、コンピュータースクリーン上、に集約されていた。
たしかに異質な状況だが、「このような状況だからこそ、トップレベルのパフォーマンスをしなくては」と自分に過剰なプレッシャーをかけたり、仕事を失わないために限界を超えてやりすぎてしまう人も少なくないのだという。
オンラインミーティングは「意識が休まらない」?
仕事だけでなく、プライベートの集いであるはずの「オンライン飲み会」やカルチャー講座などでも“疲れ”が聞かれるのは、本当に参加したいからだけでなく、義務的に参加したりしているうちに疲労が蓄積されていくケースが多いそう。
「画面に向かう」という行動はテレビを見ることに似ているが、テレビは完全に受け身で、その間自分が何を考えていようと自由だからリラックスできるのに対し、オンラインミーティングは相互作用であるから、意識はフル稼働していて休まらないのだ。
そうはいっても、これからの世の中ではビデオ会議は不可欠な手段だ。
少しでも疲労を軽減するための解決策としては、必ずしもカメラをオンにする必要はないこと。また、オンにしていても、アングルを脇にずらす、といったちょっとした工夫でも効果があるそうだ。
また、すぐに議題に入らずに世間話でウォームアップしたり、会議の合間にブレイクをもうけてお茶を飲んだり、軽くストレッチするのも効き目があるとのこと。
あるいは、あえて必要な書類にメモを添えてeメールで交換する古来の手法を使うのも、かえって情報を厳選することができて、仕事の効率アップにつながるという。
オンラインミーティングが疲れるのは「普通のこと」と考える
仕事でもプライベートでも、うまく付き合えばオンラインでの集いは便利なツールだ。
「なんだか疲れる気がする。気のせい? 自分だけ?」
と思っていたが、この記事を読んで、それには根拠があり、誰もが感じることなのだとわかってスッキリした。
「疲れるのは普通のことなのね」と開き直って、便利な部分だけに目を向けながら、うまく付き合っていきたいものだ。
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