【医療用大麻】魔法の次世代万能薬「CBDオイル」──現代人が慢性ストレスから解放されるための方法とは 精神科医・飯塚浩先生インタビュー
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【医療用大麻】魔法の次世代万能薬「CBDオイル」──現代人が慢性ストレスから解放されるための方法とは 精神科医・飯塚浩先生インタビュー

2022年10月28日

うつ、認知症、アトピー性皮膚炎、糖尿病、自己免疫疾患など、私たちを悩ませる現代病。

そのような治療が難しい病気は、食事をはじめとする現代の日常生活の「当たり前」にあるとする精神科医の飯塚浩先生の著書『小さな町の精神科の名医が教えるメンタルを強くする食習慣』(アチーブメント出版・刊)が、ベストセラーとなっています。

 

この本の中で語られていることは、食事や生活習慣に注意するだけでなく、そのベースにある「慢性的なストレス状態につながってしまう、危険なマインドセット」についてもあらためて捉え直そう、ということ。

さらに、健康にとって多くの優れた効果があると最近話題になっている「CBDオイル」についても触れられています。

 

インタビュー

飯塚 浩(いいづか・ひろし)

精神科医、精神科専門医。鳥取大学医学部精神神経医学部に入局し、難治性うつ病、躁うつ病を中心とした臨床研究に携わる。1996年より、さいとうクリニック(東京都)において、児童虐待や家庭内暴力といった家庭問題、アルコール薬物問題、摂食障害、PTSDなどの問題の臨床と研究に取り組む。2001年、鳥取県にメディカルストレスケア飯塚クリニックを開院。著書に『小さな町の精神科の名医が教えるメンタルを強くする食習慣』(アチーブメント出版)などがある。

・メディカルストレスケア飯塚クリニック:https://iizukaclinic.jp

 

またこの著書のなかでは、大麻の薬効成分の中心である今話題のCBDについて興味深い内容が語られています。

「いつも疲れていてなにもやる気が起きない」「毎日に追われている」という人々に、飯塚先生はどんなアドバイスをしているのでしょうか。

CBDのお話の前に、まずそこから伺ってみました。

 

前回の記事はこちら:鬱や不安障害などのメンタル疾患を根本から治すには向精神薬よりも「食習慣」や「栄養」が大事──精神科医・飯塚浩先生インタビュー | カラダチャンネル

 

「仕事は辛くて当たり前」は本当なのか

 

──先生が書かれた『小さな町の精神科の名医が教えるメンタルを強くする食習慣』に特にページを割いて記されている「マインドセットの見直し」についてお話を伺います。いま先生がもっとも大切にされてもいる考え方ですね。

 

飯塚浩先生(以下、敬称略):仕事でも学校でも、休むことや気を抜くことが不安で、とにかく頑張っている人が多いと思います。そのようにいつも気を張り詰めているのは、「慢性的なストレス状態」です。これは視床下部や副腎、自律神経などの状態が「緊急事態モード」になっているということですので、体に大きな負担がかかっています。

 

──日本人は「これをやらないと、将来ダメになる」といった、ネガティブなモチベーションで動いてる人が多いと言われています。いつも何かに追い立てられて生きているというか。

 

飯塚:たしかに「不安」を利用することで一時的には都合よく自分や他人を動かすことができるかもしれません。しかしそういったやり方が長く続くと、さすがに嫌になってきますよね。嫌なことを続けることは、とうぜん大きなストレスを伴います。

 

 

飯塚:勉強や仕事に楽しみを見いだすことができなければ、結局「勉強嫌い」「仕事嫌い」になってしまいます。勉強がつまらないなら、勉強しなくなるのが普通ですし、それが正常な子どもです。
ただ、子どもが勉強すること、大人が仕事をすることは、事実上社会的に義務化されていますから、やらないと「なぜやらないの?」と周囲にいわれてしまいます。だから「仕事は辛くて当たり前。みんな辛いけど頑張ってやっている。だから、自分も頑張らなくちゃいけない」みたいな感じでやっている人が多いのです。

 

──たしかに、そういう方は多そうです。

 

飯塚:「わからないことがわかるようになる」「できないことができるようになる」というのは、本来多くの子どもは大好きなはずです。また、「自分の働きが人の役に立つ」とか「喜んでもらえる」ことが嫌いな人はほとんどいないでしょう。勉強も仕事もそういった本質的なことを見失わなければ「いやなもの」ではないはずなのです。

 

──「いやなもの」を我慢することばかり学んで、「喜んでもらえる」ことを後回しにする傾向が日本の社会にはあるかもしれませんね。

 

飯塚:そういう本質的なことを踏まえている教師や教材は、子どもに勉強の楽しさと有用性を伝えることができるでしょう。同様に、その人と一緒に仕事をするとモチベーションがぐっと上がる先輩や上司などもいると思います。
子どもには勉強を楽しくしてくれるような先生や本を探してあげたいものです。そして、大人である私たちは、仕事や家事を楽しくしてくれるような本などの情報を自分自身に与えたり、一緒にいると気が楽になるような人との時間を大切にしてあげたいですね。聞いていて気が重くなるような人の言葉や説教は、真に受けてしまうと生活がつまらなくなってしまいますから。

 

安心とは「悪いことが起こっても、なんとかなるよね」と考えられること

 

──マインドセットを見直すことは、日本人は苦手そうですね。だからこそ、身近に一緒にいて楽になるような、ロールモデルになるような人を見つけるのは大事ですよね。

 

飯塚:どっぷりその環境の価値観に漬かっていると、苦しくても頑張ってしまいがちです。それはカルト宗教だろうが、ブラック企業だろうが同じです。家族という関係性も風通しが悪い環境になりがちなので、親の生きづらい価値観にさらされて苦しむ子どもというのも多いわけです。
そういった子どものマインドセットが、たった一人の友だちや教師との出会いで劇的に変わるということも起こりえます。全然勉強しなかった子どもでも、いい先生との出会いで勉強の面白さに目覚めることだってよくあることです。片付け本や料理の本がめちゃくちゃ売れたりするのも、つまらなくなりがちな毎日の家事をまったく異なる魅力的なものにしてくれるからです。

 

──毎日に苦しさを感じたら、当たり前だと思っていた価値観や自分のマインドセットを疑ってみるといいかもしれませんね。

 

飯塚:だから、日常的なことで苦しいことがある場合は工夫した方がいいのです。気持ちが重くなる人の話は聞かない方がいいですし、本や映画や音楽、動画なども、自分の気持ちが軽くなるようなものを身近においておくべきなんです。そうやって自分の環境を気持ちのよいものにしていくことを意識するといいのではないでしょうか。

 

──まずは、自分のココロが楽になる環境に身を置くよう心がける、と。言われてみると、自分がしんどい環境にいるのに、それに気づかないまま過ごしている人も多そうです。

 

飯塚:だから僕は「健康情報」を入口にして、幸せに生きている人のヒントがいっぱいもらえるようなコミュニティを作りたいと考えています。体調や気分が悪いのは、多くの人が何とかしたいと思うでしょう。そこを入口にして、生活全体がよい影響を受けられるようなサロンみたいなものがあったらいいなと考えています。

 

 

──みんながホッとできるような人間関係を築くための居場所ですね。

 

飯塚:そうです。「あ、こういう生き方をしてもいいんだ」って真似したくなるような、そんなヒントがたくさんもらえる空間があるのはいいことですよね。誰からも否定されないように生きるとか、失敗のないように生きるとか、そういう考え方で安心しようとすると、すごく周囲の人や情報に気を遣って、ものすごく頑張らざるをえなくなります。でもそのやり方では、逆に不安や焦りから逃れられなくなってしまいます。

 

──それがひどくなると、引きこもりになってしまうかもしれませね。

 

飯塚:人間関係で絶対に誤解されたくないとか、絶対悪く言われたくないっていう人だと、人間関係そのものが、もう苦痛以外のなにものでもなくなる。絶対失敗できないと考えて仕事をしていれば、仕事に行けなくなってしまいます。絶対に事故らないようにと考えてしまうと運転ができなくなります。任意保険に入っておいて交通ルールを守って運転している限り、たとえ事故があっても大抵の場合はなんとかなります。確率の低すぎることを考えても、仕方ありません。
安心というのは悪いことが絶対におこらないという保証ではなく、「悪いことが起こっても、なんとかなるよね」と考えられるようになることで得られるものなんです。

 

「カンナビナイド」は人間の身体の中でも作られている

 

──そして、ここからは「次世代の万能薬」とされているCBDオイルについて話を聞かせてください。そもそもCBDオイルとはどんなものなのでしょう。

 

飯塚:CBD(カンナビジオール)は大麻草からみつかった薬効成分です。人類は大麻草を薬として数千年にわたり使っていました。それがアメリカによる政治的な理由で「まったく医療的用途のない麻薬」とされ、日本でも戦後の占領下で禁止となりました。しかしそのアメリカでは、事情が大きく変化してきています。その理由は、難病から日常的な不調まで、他の治療では代えがたい効果があることが再認識されてきたからです。

 

──大麻草に含まれる成分が、医療用として非常に効果があるということがわかってきた。

 

飯塚:大麻草には多くの成分が含まれますが、薬効の中心はカンナビノイドというポリフェノールです。THC(テトラヒドロカンナビノール)とCBDは代表的なカンナビノイドであり、特に研究が進んでいます。
実はTHCと同じものはヒトの体内で作られています。これは「内因性カンナビノイド」と呼ばれる私たちの体にとってとても重要なものです。これが作用するカンナビノイド受容体というのは、実は人間の脳でもっとも数が多い受容体なのです。神経系や免疫系に広く分布し、人間の神経や免疫をコントロールする重要なシステムを構築しています。これはエンドカンナビノイドシステム(ECS)と呼ばれています。

 

──先生の著書を読んで、その点は特に驚きした。大麻草の成分であるカンナビノイドは、そもそも人間の体の中でも作られていて、非常に重要な働きをしていると。ただ、どうしてTHCではなく、CBDオイルを使うのでしょう。

 

飯塚:THC成分は、現在まだ日本では法的に規制されています。またTHCは作用が強いですから、THCだけのオイルを作っても健康ツールとしては望ましいものではありません。大麻の全草成分をオイルにしたものは「フルスペクトラム」と呼ばれますが、これはCBDをはじめとした多くの成分と一緒に、THCがほんのちょっと入っているというものです。

 

──なるほど。

 

飯塚:医療的には、この「フルスペクトラム」がもっとも効くことは事実です。しかし、CBDを中心とした他の大麻草成分だけでも素晴らしい効果があります。内因性カンナビノイドと同様の働きをするTHCが入らなくとも、CBDを中心とした他の成分が、私たちの体で神経や免疫の働きを制御しているエンドカンナビノイドシステムの機能を底上げしてくれるのです。

 

──その「エンドカンナビノイドシステム」が、神経や免疫のはたらきを指揮しているようなイメージでしょうか。

 

飯塚:たとえば神経の過剰活動が起こると、シナプスという神経と神経のつなぎ目で神経伝達物質が大量に放出されます。すると、この過剰な刺激の受け手側の神経から内因性のカンナビノイドが分泌され、それが放出側の神経にあるカンナビノイド受容体に結合します。
そうするとシャワーの蛇口を絞るように、脳内で放出されている神経伝達物質の過剰な放出がスーッとおさまるのです。免疫細胞にもカンナビノイド受容体がありますので、同様に免疫の過剰活動を調整しています。

 

──先生の著書では、最後の章がCBDオイルの解説に割かれていましたね。

 

飯塚:現代病といわれるさまざまなメンタル疾患やカラダの不調は、私たちの現代的な生活の中のさまざまな「当たり前」に原因があります。食事、カフェイン、生活リズム、そして慢性ストレスを生みやすい現代的なものの考え方など、原因は多岐にわたります。
それらの影響を認識し、そして生活習慣を変えて健康になることが大切です。「現代病の養生」みたいな内容の本なのですが、その最後にCBDオイルの解説を持ってきたのには理由があるんです。

 

──現代病を予防するためには、生活習慣と内因性カンナビノイドについて知り、見直すことが大事ですね。

 

飯塚:そのとおりです。人間が健康でいるためには、複雑に進化した神経系や免疫系をバランスよく調整してくれる「エンドカンナビノイドシステム」がしっかりと機能してくれることが欠かせません。その機能が落ちてしまうと大変なことになります。気分の悪さ、不眠、痛み、倦怠感、食欲不振などから神経や免疫がからむ難病まで、さまざまな不調が生じてしまいます。

 

──私たちのさまざまな不調の原因として、そうしたカラダの中のバランスやシステムが機能していないことがある。

 

飯塚:内因性カンナビノイドが低下する原因となるのは、栄養不足、有害物質、加齢、そしてストレスです。ですから、本に書いてある健康習慣の実践はエンドカンナビノイドシステムの機能の維持・向上につながります。まともな栄養の摂取やストレスの軽減は、それらの個別の効果にとどまらず、内因性カンナビノイドを介した総合的な効果につながるのです。

 

いいCBDオイルの見分け方

 

──ご著書で述べられている健康習慣についてと、エンドカンナビノイド・システムの重要性がとても理解できました。CBDオイルには素晴らしい効果が期待できそうです。

 

飯塚:神経系や免疫系のコントロールがとれなくなると、多くの不調が生じます。神経の過剰興奮というと「てんかん」が代表的ですが、薬が効かない難治性てんかんの治療薬としてCBDオイルは使われています。
不眠、不安、イライラ、かんしゃく、気分の落ち込みなどにももちろん効果が期待できます。免疫系の過剰活動である自己免疫疾患や炎症を伴う多くの疾患にも応用できるでしょう。もちろん、さまざまな痛みにも効果があります。

 

──そのカンナビノイドの一種であるCBDオイルですが、いまさまざまなショップなどで売られていて、どれがいいのか素人にはわかりづらいように思います。まずはどのような製品を選んだらいいでしょうか。

 

飯塚:CBDだけのオイルを「アイソレート」、他の成分も含むものを「ブロードスペクトラム」と呼びます(ただしTHCは除かれています)。大麻草はCBD、テルペン類などの多くの成分がオーケストラのように相乗効果を発揮します。単独成分よりも、そのほうがはるかに効果が高くなるのです。ですから、効果の面からいえば「ブロードスペクトラム」がよいでしょう。

 

──まずは「アイソレート」よりも「ブロードスペクトラム」を選ぶ、と。

 

飯塚:しかし、そこで注意すべきは農薬などの有害物質の混入です。大麻草には、土壌の有害物質を吸い上げるという特徴があります。安全性を担保するためには、農薬とは無縁の広大な土地が必要なのです。ですから、そういう生産体制が担保できる信頼できる老舗メーカーがよいでしょう。ちなみに私が所属する臨床CBDオイル研究会という数百名規模のドクターグループで使っているのは「エンドカ」というメーカーです。

 

──栽培や生産の段階から信頼できるメーカーのものですね。

 

飯塚:いまネットでは、創業して間もないメーカーの製品が溢れており、信頼性を担保するのが年々難しくなってきています。研究会にも1/5程度の価格を提示してくるメーカーもありますが、実績の裏打ちがない製品には注意が必要です。

 

──それにしても、日本でもこうしたカンナビノイド治療の可能性はもっと知られるべきですね

 

飯塚:「どれだけ多くの人が救われることか」と心から思っています。だから、正しく認知が広がってほしい。でも、CBDは素晴らしい効果があるものですが、万能薬ではありません。

 

──CBDさえ取ればいい、というものではない。

 

飯塚:例えばカフェインを多量に飲んでいて、CBDでバランスを取ろうとするのって、無意味だと思うんです。まずはそういう基本的な部分が大事で、食事や栄養に注意したり、生活リズムを整えたり、カフェインやグルテンをやめたり、慢性ストレスにつながるような考え方をやめたりすることが重要です。あくまでもCBDは、プラスアルファのツールなんです。

 

医療的観点から見るカンナビノイド治療の可能性とは

 

──先生のご著書は、今どこの書店でも目立つところで平置きになっていますね。多くの人が感銘を受けているのではないかと思います。最後に今後の抱負などをお聞きできますでしょうか。

 

飯塚:健康や幸せにつながる生活の仕方がイメージできるような情報を、継続的に出していきたいと考えています。サプリメントやCBDオイルはあくまえも補助ツールであって、解決法ではありません。私が事業として今後やりたいことがあるとすれば、真っ当な食材を持続的に供給できるシステムを作ることです。

 

 

飯塚:そしてもっともやりたいことは、みんなが安心できるコミュニティの構築です。健康で幸せに生きるヒントがいっぱい得られるような、人と人のつながりを作っていきたいと考えています。いま、僕自身がいちばん欲しいものが、そういうコミュニティですから。

 

***

 

今回伺ったお話からは、医療の視点だけにとどまらない、さらに大きな世界観のようなものを感じました。

飯塚先生は「鳥取県の小さな町の精神科」の医師として、今日も数多くのメンタルの不調を患う患者さんのためにできることを模索しています。著書はもちろん、今後の先生の活動や言葉から目が離せません。

 

前回の記事はこちら:鬱や不安障害などのメンタル疾患を根本から治すには向精神薬よりも「食習慣」や「栄養」が大事──精神科医・飯塚浩先生インタビュー | カラダチャンネル