【ユートニー】完全にリラックスしてカラダの感覚を研ぎ澄ます。驚くべき発想の健康法「ユートニー」ってなんだ?
2021年01月12日「ふだん意識していないカラダの感覚」に気づいてみる
いま、皆さんがこの記事を読んでくださっているのは、パソコンでだろうか、それともスマホ? 机に向かって? 通勤電車の中? あるいはベッドに寝転びながら?
そしてその瞬間、体のどの部分が、机や床、つり革など、カラダ以外の「モノ」に触れていて、そこからどれくらいの重力を受けているだろうか?
そんな、ふだんは意識していないカラダの感覚に目を向けた健康法「eutonie(ユートニー)」が、最近ヨーロッパを中心に注目されている。
eutonie とは、ギリシャ語で“good”を意味する“eu”と、ラテン語で“tension”を意味する“tonie”を組み合わせた造語だ。
▼ユートニーの練習風景
【参考記事】
・Qu’est-ce que l’eutonie et comment pratiquer ? – Marie Claire
行動によって筋肉のテンション(張力)を変える
この健康法を提唱したのは、1908年生まれのゲルダ・アレクサンダーというドイツ人女性。
彼女の両親はリトミック教育に関心があり、ゲルダさんもリトミック教育を受け、のちに指導者になっている。
よってユートニーの発想のもとには、リトミック教育があったといえる。
ちなみにリトミック教育とはなんだろうか。
リトミック研究センターのサイトにあった記述を引用すると、リトミック教育とは
楽しく音楽と触れ合いながら、基本的な音楽能力を伸ばすとともに、身体的、感覚的、知的にも、これから受けるあらゆる教育を充分に吸収し、それらを足がかりに大きく育つために、子どもたちが個々に持っている「潜在的な基礎能力」の発達を促す教育
なのだという。
【参考記事】
ちなみにゲルダさんがユートニーを開発するきっかけとなったのは、10代の半ばごろから。
心臓病やリュウマチなど数々の病を発症し、カラダが自由に動かなくなり、長らく車椅子生活を送ることになったのがそのきっかけだった。
カラダの機能が限定される状態に置かれた彼女は、少ない労力でいかに効果的に自分のカラダを使うかを考えた。
そうして行き着いたのが、「行動によって筋肉のテンション(張力)を変える」という発想だった。
たとえば、重い荷物を持ち上げるときと、ソファに寝っころがってテレビを見ている時では、必要な筋肉の状態はまったく違う。
「それなのに、人間は無意識のうちに、カラダに不必要な力を入れて筋肉を緊張させていたり、逆に必要以上に緩ませていたりするのが普通です」
と語るのは、パリにあるゲルダ・アレクサンダー・ユートニーアソシエーション・フランス(AFEGA)のセバスティアン・トデスコ会長だ。
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カラダの感覚を研ぎ澄ます
たしかに、人間は無意識のうちにカラダに不必要な力を入れていると感じることは多い。
だらだら友達とおしゃべりしているような完全にリラックスしているときでも、気づくと体のどこかに力が入っていたり、電車で座っているときに膝の上に置いた手が無意識に力んでいたりする。
必要なときに必要な分の力だけを使えるように体を訓練すれば、エネルギーを浪費するのを防げるし、逆に完全にリラックスするべき就寝時には、より深く体を休められるようになる、というのがユートニーの原理であり、実に理にかなった考え方だ。
では、どうすればそれができるようになるのか。
基本となるのは、「カラダの感覚を研ぎ澄ますこと」。
物に触れたときの感触、空間にいるときの障害物までの距離感、物を押したときに返ってくる力……など、さまざまな感覚に意識を向けることで、徐々にカラダを鍛えていくことができる、という健康法なのである。
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「皮膚の感覚」で世界を感知する
とりわけ重要なのが「皮膚の感覚」。
人間は物に触れることで、その物の大きさ、重さ、温度など、たくさんの情報を感知している。
なので、物に触れたときに得られる感覚が鋭くなればなるほど、その物を使うときに必要な力の量、といったことを即座に分析できるようになるから、身体能力のキャパシティを最大限に有効活用できるようになるわけだ。
そういった感覚を磨くための訓練を行うユートニーの教室では、個人レッスンとグループレッスンがあるそうだが、セバスティアン・トデスコ会長によれば、決まった型やプログラムのようなものはなく、それぞれが思い思いに動く。
よくあるレッスンとしては、床に寝た状態で、どこに重さがかかっているか、どこか筋肉が張り詰めている部分はあるか、緩んでいるのはどこか、といったことを感じる練習。
また、テニスボールを足で踏んで痛みを感じたり、ビーズの入ったお手玉のようなものを体のいろいろな部分で触ってその感触を味わってみる。
ためしに、いまからすぐできる簡単なレッスンにチャレンジしてみよう。
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ユートニーの具体的なレッスン方法
例えばボールペンを手に持って、「いま、ボールペンはどの指に触れていて、手のどちら側に乗っていて……」など、いろいろと感じながら、手のひらで転がしたり指の間を滑らせたり、自在に動かしてみる。
または、両手を膝の上において、左右の指の長さは同じだろうか? 温度はどれくらい? 重さは? と意識的に感じてみる。
▼ユートニーのレッスン風景
レッスンでは、そこからさらに発展させて、骨の働きについても学んでいく。
骨格とはそもそも、理想的に体を使えるように形成されている。
それを狙いどおりに使ってあげることができれば、筋肉の負担を減らすことができるという発想だ。
骨格をうまく使えていないと、無意識にそれを筋肉でカバーしようとするため、無駄にエネルギーを消費する。
逆にうまくできれば、エネルギーをセーブできて疲労を最小限にとどめることができる。
ストレス緩和や疲労回復にも役立つユートニー
ユートニーは、子供から老人、産後の骨盤矯正や手術後のリハビリ、脳卒中後の訓練、体の機能が衰えている人や、反対に、さらに鍛えたいスポーツ選手など、ありとあらゆる人がそれぞれの目的に合わせて実践できるのも特徴だ。
また、物に触れたときの感触や、体が動くときの感覚を研ぎ澄ませることは、指を使って楽器を弾くミュージシャンや、表現力を必要とするパフォーマーにも非常に有効で、自身のパフォーマンスの練習にユートニーを採り入れてアーティストも多いのだそう。
ゲルダさんも、後年拠点にしていたデンマークでは、ロイヤルシアターやフィルハーモニー楽団などで団員の指導を行っていたそうだ。
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実際にレッスンしている様子を見ると、ゆっくりしたモーションからは、スピリチュアル的な感じも受けるが、ユートニーは精神世界とは関係なく、完全に身体能力に特化したものだ。
また、ユートニーをストレス緩和や疲労回復に役立てることはできるため、コーチングの一環として取り入れている会社もあるそうだ。
弦の張力を加減して音の高さを調節するピアノの「調律」のように、筋の張りを調整して出力をコントロールする。
ユートニーはまさに、「カラダのチューニング」なのである。