そもそも疲労とは何か?『超最強の疲労回復法』著者が説く、疲労とパフォーマンスの関係
2020年06月04日「疲労」はどこまで回復する? 疲労回復レベル「ゼロレベル」とは
こんにちは。運動科学者・高度能力学者の高岡英夫です。
このたび、このようなテーマの新刊を上梓いたしました。
『高岡式 超最強の疲労回復法』(高岡英夫 ・著/カンゼン・刊)
本書のテーマは「超最強高能力疲労回復法」です。そして、疲れた体をどうやって、そしてどこまで回復させるかが、本書のオープニングテーマです。
では、さっそくですが皆さんに質問です。
「あなたは疲労をどこまで回復させようと思っていますか?」
このクエスチョンに、自分なりの回答を頭に浮かべてみてください。
おそらくほとんどの方が、「疲れていない状態になればいい」と考えているのではないでしょうか。
具体的には、「普通に元気でまずまずスムーズに仕事や練習、トレーニングができる状態」を想定した方が多いはずです。
この状態は、疲労回復レベルでいえば「ゼロレベル」だと私は考えています。疲労度がプラスマイナス・ゼロというのは普通に元気な状態を指します。
つまり、とくに疲労感がなく、仕事も普通にできる状態。スポーツや運動も普通にこなせる。
プロのスポーツ選手であれば、その選手にとっての平均的なパフォーマンスが発揮できるような状態。これを疲労回復におけるゼロレベルととらえるわけです。
この考え方は非常に重要です。私の考える疲労回復とは、疲労度がマイナスで、疲れているという自覚がある人を、卓抜した方法群を用意して、いとも鮮やかに疲労度ゼロまでリカバリーするのはもちろんのこと、その先まで見据えたものなのです。
高能力疲労回復グラフでわかる「疲労とパフォーマンスの関係」
次のグラフを見てください。
これは「疲労回復度とパフォーマンスの関係グラフ」(以下「高能力疲労回復グラフ」)といいます。グラフの横軸=X軸は、疲労度を表しています。
基準となるのが、疲労度ゼロ=「疲れていない」という状態です。
その疲労度ゼロから左に行くほど、疲れが強い状態「負(マイナス)の疲労度」を表し、疲労度マイナス1で「ほぼ疲れていない」、疲労度マイナス5で「すごく疲れている」、疲労度MAXのマイナス9だと「このままでは死んでしまうほど疲れている」(入院加療が必要なレベル)という段階です。
このようにひと言で疲労といっても、疲労度ゼロから疲労度マイナス9まで、ざっと10段階の疲労度に分類することができるわけです。
一方で皆さんは、疲労に関して疲労度ゼロ、つまり「疲れていない」、普通に職場に行けて、普通に仕事ができれば、何の問題もない。
普通に運動だってできるから不満はない。
そこから上は、疲労現象自体が存在せず、疲労回復という考えや方法、行動もありえないと考えているのではないでしょうか。
ところが私の考えはまったく違います。
「高能力疲労回復グラフ」でいえば、疲労度ゼロから右側のエリア、ここにマイナスの疲労とまったく同じようなボリュームで、プラスの領域があると考えているのです。
こちら側が「正(プラス)の疲労度」で、疲労度プラス1でいえば「まったく疲れていない」、プラス6は「絶好調だ」。これはもちろん普通ではありません。
MAXのプラス9ともなると「ありえないほど元気だ」といった具合に、正の疲労も、負の疲労と同じように9段階に分類することができるのです。
人間の能力には「具体的能力」と「本質的能力」の2つがある
さて、このX軸が疲労度だとすると、縦軸のY軸は何か。Y軸は「能力の現れ」を示しています。
能力というと、例えば「英語が堪能だ」「野球ができる」「サッカーが上手い」「ピアノが弾ける」「パソコンでパワーポイントや表計算は得意」といったことが挙げられます。これら具体的技術やスキルのことを、運動科学では具体的能力といいます。
この具体的能力と疲労度には実に面白い関係があるのです。「高能力疲労回復グラフ」のY軸もかなりのボリュームがあり、上と下では天と地の差、雲泥の差があるわけです。そのY軸が示す能力の現れとは、前述の具体的能力とどういう関係にあるでしょうか?
「英語ができる」「パワーポイントが使える」といったことは、X軸の「疲労している・していない」とはほとんど関係がないことに気付くはずです。
これらの具体的能力は、疲労度に関わらず、できる人はできるし、できない人はまったく疲れていなくてもできないわけです。
いい方を変えれば、脳の中にそのプログラムがあるかないかで決まってきます。
だとすれば、ひと言で「能力」といっても、具体的能力に対し、脳のプログラムの有り無しに関わらない別途本質的能力が存在するということになります。
現実にビジネスパーソンとして発揮できている能力や、アスリートとして発揮できている能力とは、具体的能力とこの本質的能力が掛け合わさったものなのです。
それがいわゆる仕事やスポーツのパフォーマンス力です。
疲労現象は人間の「本質的能力」に含まれる
というわけで、実は疲労とは、具体的能力に含まれるものではなく、本質的能力の一部、しかも極めて重要な一部なのです。
しかもその重要な一部の中身とは決定的なもので、人のパフォーマンスにおいて、疲労の影響を受けないものは存在しないということです。
したがって、この「高能力疲労回復グラフ」のY軸に載ってくるのは、パフォーマンスであり、しかもそれは誰のいかなるパフォーマンスでもここに展開されることになるわけです。
Y軸のプラス側のMAXは、「人生最高のピカピカの元気な状態」で達成し得るパフォーマンス、マイナス側のMAXは、「入院加療が必要なほど疲れ切って一切何もできない状態」でのパフォーマンスで、その間には疲労度と同じように、何段階ものレベルが刻まれています。
そして、このグラフを見れば、疲労度とパフォーマンスには、Y=Xという正の相関関係が成り立つことがわかります(※数学上のY=Xのようにきれいな直線になるとは限らないので、少し幅を持たせてあります)。
どうでしょう。「それは当然だ」と納得していただけたのではないでしょうか。
人間の能力には、具体的能力と本質的能力という二つの能力があって、疲労現象とは具体的能力には直接的には一切関わりのないものなのです。
その反面、疲労が本質的能力にダイレクトに関わってくることがわかっていただけたでしょう。
(次回に続く)
- 作者:高岡 英夫
- 発売日: 2020/6/9
- メディア: 単行本(ソフトカバー)