セックスレスになりやすい職業1位は「ITエンジニア」!? 射精障害になる男性が増えている理由
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セックスレスになりやすい職業1位は「ITエンジニア」!? 射精障害になる男性が増えている理由

2020年10月26日

「精子力」という言葉をご存知だろうか?

男性の精力は30代半ばから劣化が始まり、その結果として女性を妊娠させる力も衰える。

このことが「セックスが面倒」、「勃起に自信がない」ひいてはEDや中折れなどの射精障害につながり、男らしさを奪っている──こう警鐘を鳴らすのは、長く本邦の不妊治療に取り組んできた獨協医科大学埼玉医療センターの岡田弘先生。

日本人男性を知らぬ間に蝕んでいる精子力劣化の症状と対策を聞いてきた。

 

インタビュー

岡田弘(おかだ・ひろし)

医師。獨協医科大学埼玉医療センター リプロダクションセンター チーフディレクター/獨協大学医学部特任教授。男性不妊を専門とする泌尿器科医の第一人者。 30年にわたり、最前線にて日本で最も多い男性不妊患者の臨床にあたる。「射精障害」など現代に特有の男性不妊症のパイオニアでもある。著書に『男を維持する「精子力」』(ブックマン社)など。

ホームページ:男性不妊バイブル

 

若くして精子力が劣化してしまう男性が増えてきた

──先生の著書『男を維持する「精子力」』(ブックマン社)を読みました。「男性の精子は老化する」という、男にとっては何ともショッキングな内容ですが、「精子の老化」といわれても、ピンとこない人も多いと思われます。

 

岡田弘教授(以下・敬称略):60歳を超えた高齢男性に子どもができたという例が、ニュースなどで報道されると、「いくつになっても、男は射精できる限り子どもが作れる」という、夢を持つことができます。しかし、体内で生産される精子は、加齢とともに年々老化の一途をたどっているんです。

 

 

──著書にある「妊孕力」(にんようりょく=妊娠させる力)が衰えるということでしょうか?

 

岡田:不妊治療の現場では、精子の数や濃度、運動量、正常形態の精子の比率などが妊孕力を左右するといわれてきましたが、この精子の減少や劣化は個人の体質によるものばかりではなく、老化によってももたらされることが判明しているんです。
こうした精子の受精能力や男性の持つ精力、勃起力などを、総じて私は「精子力」と呼んでいるんですが、これが近年危うい状況に置かれています。精子力の劣化が、より若い頃から始まる人が増えてきたことが、わかってきたからなんですね。

 

──何歳くらいから精子力の劣化がはじまるのでしょうか?

 

岡田:個人差はありますが、妊孕力が急激に低下し始める目安となるのは、35歳です。精子の受精能力はこの年齢を境に「それほど変わらない者」と、「明らかに衰える者」の二つに分かれるんですね。
ところが、現在の日本は晩婚化が進んでいるため、35歳という曲がり角を過ぎてから結婚し、子づくりに励む男性が多いんです。結婚したときには、すでに精子力が衰え始めているということです。日本社会の少子化は、じつはこうした点も原因の一つと考えられます。

 

セックスレスの既婚者の割合は44.6%も

 

──精子力の衰えは、妊孕力の他にも弊害がありますか?

 

岡田:セックスが弱くなったり、勃起力が衰えるなどのデメリットも生じますね。

 

──セックスレスという問題にも影響するということでしょうか?

 

岡田:一般社団法人日本家族計画協会が実施している「男女の生活と意識に関する調査」によると、既婚者のセックスレスは44.6%にのぼります。平成26年9月1日現在、満16~49歳の男女3,000人を対象(有効回答数1134人)としたものです。
この調査は、平成13年に新聞社のインターネット調査「夫婦1,000人に聞く」のときは28・0%でした。その後、「男女の生活と意識に関する調査」が変わって行うようになり、平成16年31・9%、18年34・6%、20年36・5%、22年40・8%、24年41・3%、26年44・6%。調査のたびに増加傾向にあり、歯止めがかかりません。

 

 

──「セックスに対して積極的になれない理由」(図表)で、男性にもっとも多いのは「面倒くさい」ですか…。なんとなく、わかる気がします。

 

岡田:なんとなくわかる……では、だめなんですよ(笑)。なぜ「面倒くさい」のか、その原因を考えないと。そこで考えるべきなのも、やはり精子力。以下の表は、私が不妊治療にあたる際に、実際に使用している問診表の一部です。
「高熱」「性病」「睾丸の状態」などの過去の病気歴から、「喫煙の有無」「飲酒」「食欲」といった生活習慣まで並んでいますが、当てはまる項目の多い男性ほど「精子力が乏しい」と言えます。

 

1 性欲はありますか? 2 勃起はしますか?
3 射精はしますか? 4 性行為はだいたい一週間に __回
5 男性不妊として治療を受けたことがある? 6 39度の熱が出たことがある?
7 性病にかかったことがある? 8 睾丸を打って腫れたことがある?
9 睾丸を降ろす手術をしたことがある? 10 そけいヘルニア(脱調)の手術を受けたことがある?
11 睾丸の袋(陰のう)に水が溜まったことがある? 12 入院手術を擁する病気にかかったことがある?
13 心臓病または肺の病気がある? 14 以下の病気にかかったことがある?

(結核・糖尿病・おたふくかぜ)

15 ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)、または精神病の薬を使ったことがある? 16 アレルギー体質、または体に合わない薬がある?
17 タバコを吸う?(__本 × __年) 18 お酒を飲む?(__合 × __年)
19 食欲はある? 20 よく眠れる?
21 便通はいい? 22 小便の回数は? 昼間__回(夜__回)


──疾患と日常生活が、精子力の劣化と関係している……と。

 

岡田:この問診票は、「射精障害」の原因を突き止めることに役立ちます。射精障害とは、EDや中折れなどを訴える男性が持つ症状ですが、「喫煙本数」「ステロイド薬の服用」「心臓か肺の病気を患った経験」などが原因となっている可能性がきわめて高いんです。
私のもとには年間約2,000組の夫婦が不妊治療に訪れますが、うち10%が射精障害ですよ。

 

 

射精障害になりやすい仕事

 

──射精障害を持つ人の職業などに、特徴はありますか?

 

岡田:ある年の例をあげると、もっとも射精障害の多い職業はITエンジニアで、患者の52%を占めていました。
以下、海外証券トレーダーが14%、教師が10%。IT・金融という職業は、射精そのものに障害を持つ人が突出している。明らかに精子力が弱い人が多いのです。

 

 

──21世紀の最先端企業に携わる人たちですね。ストレスが溜まりやすい職種、というイメージもあります。

 

 

岡田:ある証券トレーダーは、1日12時間働き、帰宅してからも8時間、パソコンの画面ばかりを眺めている生活を送っていました。これでは、セックスに興味がなくなるのは当然ですし、そもそも味覚や嗅覚に鈍感になるといった、五感に障害を抱えることにも繋がりかねない。

 

 

──リモートワークの普及で、他人とのコミュニケーションの絶対量も減っていると感じます。

 

岡田:セックスは女性の髪の香りなど、五感に訴える要素も多く、これがなくなると射精したくても出ないという状態に陥る危険性があるのです。
もちろん、これは一症例にすぎませんが、スマホの普及やビジネススタイルの変化によって、今後こうした男性がさらに増える可能性がないとは、決して言い切れないでしょう。

 

・・・

 

生活習慣の変化などによって若くして男性機能が衰えてしまう人が増えている現状が、どうやら少子化の一因にもなっているようだ。

次回に第2回では、セックスレスと射精障害の現状をさらに掘り下げ、精子力維持に向けた解決策を見ていく。

 

【参考記事】

・不妊治療に関する取組み |厚生労働省

・不妊治療と仕事の 両立サポートハンドブック – 厚生労働省