ノリやコンブにワカメまで。フランスでは「海藻ブーム」が到来中
2020年08月14日なんでも最近、流行りものに目がないパリっ子の間でワカメやコンブ、海苔などの海藻類がブームなんだとか。
パリ在住のライター・小川由紀子さんによるリポートです。
健康志向のフランス人の間で流行っている「KOMBU」「WAKAME」などの海藻類
最近、フランスのビストロのメニューに、Algue(アルギュ、海藻)という文字をよく見かけるようになった。
この前、現地のスーパーで見た薄緑色のクッキーも、流行りの抹茶味かと思ったら、なんとスピルリナ味!?(※)
(※)スピルリナ:微細藻類の通称で、多くはサプリメントとして流通している
板のりは普通のスーパーでも手に入るし、乾燥コンブやワカメは、どこのBIO(オーガニック)ショップでも売られていて、呼び名も、KOMBU、WAKAME……とそのまんまだ。
「海藻」は伝統的なフランス料理に使う食材ではないから、これまでフランス人には馴染みがなかったけれど、日本食ブームで海苔巻きや味噌汁を楽しむようになって、フランスの食卓でもじわじわと市民権を得ていた。
ただ、これまではアジア料理に使われる「エスニックな食材」という位置付けだったのが、最近では海藻がもつ優秀な栄養素にスポットがあたり、健康食品として注目されてきている。
日常的に海藻を食べると良い理由
先日『Le Figaro』に掲載された、「日常的に海藻を食べると良い理由」という特集記事によれば、キリスト以前の時代には、チリや北米、ヨーロッパでも海藻が食されていて、ここ最近の海藻ブームは、むしろ太古の習慣に戻るようなものだという。
古代に食されていたという事実は、体への恩恵があるというエビデンス。
そして海藻といえば、おもな栄養素は「ヨウ素」だ。甲状腺ホルモンの主原料で、新陳代謝をうながす働きがある。
海苔や昆布を日常的に食べる習慣のある日本人は、自然な形で十分な量のヨウ素を摂取できているが、欧米人は食材からはほとんどとれないから、食塩に添加した「ヨード塩」なるものもスーパーで売られている。
しかしヨウ素だけでなく、『スピルリナの驚くべき美徳』の著者ブノワ・ルグラン氏によれば、見逃せないのはスピルリナや赤みを帯びた紅藻に含まれるたんぱく質なのだという。
とりわけダルスと呼ばれる紅藻は、食物繊維も含んだ超優秀食材とされる。
ダイエットやデトックス、疲労回復効果も
海中育ちで、鉄分、マグネシウムなど天然のミネラルも豊富だから、海藻から抽出されたエキスは、カルシウムを強化したタイプの豆乳にも使われている。
「ダイエットにはもちろん、気分を安定させたり、疲労回復、骨の強化にもいい。抗酸化作用で活性酸素を体内から排出したり、デトックスにも役立つ」と、記事の中で栄養士が海藻がもつ効果を解説しているが、これを聞いたらすぐに買いに走りたくなるようなうれしい作用がいっぱいだ。
妊婦はヨウ素の摂りすぎに注意、と言われるが、スピルリナに含まれるビタミンB9は妊娠時に必要な栄養素であり、アスリートのように肉体を酷使する人には疲労回復にも役立つという。
ただし適量を守ることが大切で、ルグラン氏は「1日3~5グラム。コーヒースプーンにして1、2杯程度を目安に」と説いている。
またフランスでは、以前スピルリナでアレルギーを発症した症例があったため、フランス国内を優先的に産地をしぼり、自然栽培されたものだけに限定している。
ヴィーガンからも注目される海藻類
BIOショップで見る海藻はだいたいがフランス北西部のブルターニュ産で、美味しいお魚がとれる漁場だけに海藻も肉厚でプリプリ、海の味がジュワッと濃い。
フランス人はどうやって食べているのか調理法が気になるところだが、サラダの具にするのが一般的だけれど、ワカメなどはバターに混ぜて塩味と磯の香りを楽しむというフランスっぽい食べ方も。有名なボルディエ社の海藻バターは、フランス土産の定番商品だ。
また、コンブを魚料理の出汁に使ったり、海苔をスナック感覚でおやつ替わりに食べる人もいる。
持続可能な社会を追求しようという意識が高まるにつれて、フランスではヴィーガンに転向する人が増えている。
たんぱく質もとれて栄養豊富な海藻は、今後ますますいろいろなメニューでお目にかかりそうだ。
【参考記事】
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