【ウォーキングの効果】毎日30分の「速歩」がQOLをあげてくれる理由
2020年06月25日誰でも毎日必ず行っているエクササイズ=ウォーキング
気軽に始められて、続けやすい――。
運動を習慣づけるには、そういったものから始めるのが一番。これは、もう絶対にそうだと言い切れます。
ぼくもこれまで、いろいろやりましたよ。
フィットネスジムに通おうと決意したものの、すぐさま幽霊会員になったこともあれば、毎朝ジョギングしようにも、どうしても布団から脱する一歩が踏み出せずに、二度寝ライフをエンジョイしてしまったこともあります……。
いや、もちろんね、ジム通いもジョギングもやったほうがいいんです。
でもね、それと合わせて、もっと基本的な運動の方法を磨いたほうがいいのではないかと、ぼくは思うのですね。
それは、ずばり「ウォーキング」です。
ウォーキングの魅力はなんといっても、ダイエット効果です。
そして、実は、集中力を高めて、昼間の仕事の効率を上げるのにも、有効だということがわかってきました。
たかがウォーキング、とあなどることなかれ。
かくいうぼくも、ある失敗談から、ウォーキングの効果を実感しつつあります。
どんな効果が明らかになっているのか、研究成果を紹介しつつ、運動強度をあげるための「歩き方」について、解説していきたいと思います。
「肥満の解消」だけじゃない! ウォーキングの効果とは
ただ「歩く」。
それだけでも、長時間継続すれば、脂肪がエネルギーとして使われて、身体にさまざまなよい影響があることがわかっています。
具体的には、以下のような効果があるとされています。
・肥満の解消
・血中の中性脂肪の減少
・血圧や血糖値の改善
・心肺機能の改善
・骨粗鬆症の予防
生活習慣病を予防するためにも、まず肥満は避けたいところ。
また、骨粗鬆症といえば、高齢者のイメージが強いかもしれませんが、実は、50代以降から増加し、40代でも10人に1人が骨粗鬆症であるという報告もあります。早めに対策を行うに越したことはないでしょう。
さらに、血糖値の改善もありがたいですね。ぼくは若干、糖尿病予備軍なものですから、つい食いついてしまいます。
そして、心肺機能の改善も見逃せません。こうして原稿を書いているときなど、なにかの作業に夢中になると、ぼくはどうしても呼吸が浅くなりがち。
ウォーキングで呼吸を意識して、しっかり全身運動させる。そのことは、思いのほか、身体によい影響を及ぼすといえそうです。
「週1回の強度の高いトレーニング」よりも「毎日の軽い運動」
ウォーキングの効果については、身を持って実感した経験があります。
いつも駅までは15分程度の距離を歩いて行くくらいで、慢性的な運動不足が気になっていたぼく。
あるときから、ボクシングジムに通い始めたんです。
ただ、会社帰りに行くので、どうしても帰宅は遅くなります。だから、帰りにバスを使うようになったんですね。ボクシングがあるときは。
でも、次第に、朝の通勤時もバスを使うようになって、しまいには、以前は駅まで歩いていたのに、完全にバス通勤になってしまったんです。
会社への通勤のための片道15分の歩行ですから、行き帰りの往復で約30分ほどのウォーキングをやめたことになります。
でも、そのとき、ぼくは、こう思っていました。
「バスを使って移動時間を短縮することで、週1回のハードなボクシングジムをこなせてるぜ!」
そう、むしろ、運動不足は解消されていると思っていました。
なにしろ、ボクシングでは、かなりの汗をかきます。シャドーボクシングにミット打ち、そして、サンドバック。
練習後の疲労感や達成感も半端なものではありません。運動に打ち込んでいる自分を十分に味わうことができます。
その一方、駅まで歩くことは、それほどの負荷だとは感じていません。往復30分ほどのウォーキングで「運動をやっています!」と胸を張るには、あまりにももの足りなかったのです。
週1回のボクシングが、ぼくの身体活動量を上げてくれていると信じて疑いませんでした。
でも、その結果、どうなったか。
ボクシングによって、体重は減るどころか、むしろ増えてしまいました。体脂肪率を見ても、筋肉で体重が増えているわけではなさそうです。
原因はもちろん、毎日、通勤のために行っていた家と駅の間のウォーキングをやめてしまったこと。
つまり「週1回の強度の高いトレーニング」よりも「軽くても毎日の運動」が減量には効果的なんですね。そのことを、身を持って知ったのでした。
ウォーキングがもたらす脳への影響
脂肪の燃焼を始めに、さまざまな面で効果をもたらす、ウォーキング。
実は、脳にもよい影響を与えることもわかってきました。
米国内科学会(en: American College of Physicians)が発行する『Annals of Inter Medicine』(2006年1月17日号)に研究成果を発表したのは、ワシントン大学の医学博士エリック・B・ラーソン氏らです。1)
研究は、シアトルに住む66歳以上の高齢者1,740人を対象に行われました。
認知症を発症するかどうか、平均6年の追跡調査を行いながら、過去1年間に行った運動の頻度を尋ねました。
運動の種目は、ウォーキング、エアロビクス、水泳、ストレッチなどです。
その結果、平均6.2年の追跡期間中、158人が認知症を発症。週3回以上の運動頻度で認知症リスクが3割も減少することがわかりました。
そして、アルツハイマー病発症者に限定した分析でも、同様の結果となったのです。
もっとも続けやすく手軽な運動、ウォーキングを定期的に実践することは、脳の老化を防いでくれます。
例えば、朝の始まりにウォーキングをとりいれれば、脳が活性化し、昼間の仕事の作業効率を上げてくれることでしょう。
また、ウォーキングの利点として、ジョギングと違って、常に足がついているために傷害が起こしにくい、という点が挙げられます
慣れない運動を急に初めて、体を痛めてしまった。そんなことはよくあることですからね。それでは、かえって運動を日常から遠ざけてしまいます。
ウォーキングならば、そうしたケガの心配は比較的少なくなります。
これから運動を始めるには、ちょうどよいですよね。
強度の強い無酸素運動よりも、まず有酸素運動を
ウォーキングもどうせやるならば、より効果が上がる方法で行いたいですよね。そこで注目したいのは「全身持久力」です。
全身持久力は、いわゆる「スタミナ」と呼ばれるもので、全身持久力の高い人は低い人と比べて、約2倍も死亡リスクが下がるとまでいわれています。
なぜなら、全身持久力は身体活動量と相関関係にあり、身体活動量の向上は、生活習慣病を予防してくれるからです。
全身持久力を測定するときは「最大酸素摂取量」が指標となります。
つまり、「1分間に体内に取り込まれる酸素の最大量」をいかに増やすか。
それには、強度の強い無酸素運動(短い時間に大きな力を発揮する短距離走やレジスタンス運動など、強度の高い運動)よりも、有酸素運動が効果的だといわれています。
具体的には、「ハアハア」というリズミカルな呼吸を行う、ジョギングやサイクリング・速歩などの有酸素運動が、全身持久力を向上させてくれます。
ちなみに、有酸素運動は連続して20分以上行なわないと脂肪の燃焼が始まらないという話を聞いたことがある人も多いと思います。
しかし、1日に30分の運動を1回行っても、10分の運動を3回行っても、両者の減量効果には差がないという研究成果があるそうです。
要するに、有酸素運動の効果は「1日あたりの総運動時間」と相関するんですね。
メタボ気味で脂肪を燃焼したい人、肥満体型から脱却したい人はまず「1日あたりの総運動時間」を気にすると良さそうです。
【参考】厚生労働省(e-ヘルスネット):内臓脂肪減少のための運動
やや強度を高めたウォーキング=「速歩」の効果
全身持久力を高めるために、とりわけおすすめしたいのは、「速歩」です。
いつもより早く歩くことは、誰もが手軽にはじめられるトレーニングといえますし、なにより低コストで安全です。
【参考】厚生労働省 e-ヘルスネット:なぜ全身持久力が必要なのか -健康と全身持久力の関連性
ジョギングとまではいかないまでも、やや強度を高めたウォーキングが、全身持久力を向上させ、生活習慣病の予防にもつながるということになります。
また、強度を高めるウォーキングとして、「メッツ」を意識するといいでしょう。ちなみに、メッツとは、運動強度の単位のこと。
同じ歩くにしても「メッツ」の高い方法で行えれば、同じ時間を行っても効果が変わってきます。
「座って安静にしているとき=1メッツ」、「普通の歩行=3メッツ」となります。
そして、下記の点に気をつけるだけでも、メッツの高いウォーキングを実践することができます。
1.下を向いて歩かない(20mくらい前を向いて歩く)
2.歩幅を広げる(普段より5cm前に踵をつけて歩く)
3.腕をテンポよく振る
4. スピードは普段より早くきついと感じない程度で
以下の厚生労働省の記事では、動画でも解説しています。これはぜひ皆さんにも一度やってみて欲しい歩き方ですね。
【参考】厚生労働省(e-ヘルスネット): 運動強度を高める歩き方「レッツ・メッツ・アップ!」 ※動画あり
ぼくは今、再び駅まで歩くようにしています。
明日からはさらに、メッツの強度を上げる歩き方を意識すれば、日々のウォーキングも立派なトレーニングになります。
万歩計なども利用しながら、「歩くこと」に意識を向けるだけでも、十分に身体に変化をもたらせます。
さらに、座っているときも、隙間時間にスクワットを行うようにしています。これでもう運動不足に悩む毎日からオサラバです。
皆さんもまずは明日からの通勤時の歩き方で「強度」を意識してみてください。大切なのは、毎日続けること。
五感を研ぎ澄ませて、毎日、近所をウォーキングすれば、見過ごしていた風景とともに心身ともにスッキリした新たな自分にも出会えるかもしれません。
【参考文献】
1)Eric B. Larson, Li Wang, James D. Bowen, Wayne C. Mc Cormick, Linda Teri, Paul Crane, Walter Kukull. Exercise is associated with reduced risk for incident dementia among persons 65 years of age and older. Annals of Internal Medicine 144: 73-81, 2006.