メンタルに影響する「座りすぎ仕事」。大腰筋を解放するエクササイズで気分もシャッキリ!
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メンタルに影響する「座りすぎ仕事」。大腰筋を解放するエクササイズで気分もシャッキリ!

2020年05月28日

座りすぎは精神面にも影響する

コロナ鬱(うつ)――。

最近はそんなワードも目にするようになりました。みなさん、長い自粛生活から一転、いつもの日常が戻ってきつつありますが、お変わりありませんか。

そうは言っても長期間の自粛生活で在宅時間が長くなってしまったいま、私たちが自覚している以上に、体へのダメージは大きそうです。

 

これまで、『カラダチャンネル』でデスクワーカー向けに解説してきたことを簡単にまとめます。

 

・「座る」という動作は「股関節屈曲」を続けている状態で、筋肉を縮こまらせてしまう

・座ってばかりだと身体活動量が低下し、がんリスクなども高まる

・股関節屈曲の主動筋である大腰筋は、全身のスタビレーション機能を保つ重要な働きもある

・座る時間を減らしながら、座位で収縮しがちな大腰筋をエクササイズで活性化させる必要がある

 

これまでに紹介した大腰筋へのエクササイズ法は、こちらの過去記事をご参照ください。

さて、これまでは座りすぎによる身体的なダメージについて、解説してきました。しかし、実は長時間の座位で身体活動量が減ると、精神面にも影響を及ぼします。

エクササイズに入る前に、解説していきたいと思います。

 

運動はメンタルヘルスを改善させる

「自宅で自粛せざるを得ない状況が続くなか、精神的な落ち込み、なんだかやる気が出ない、会社に行く気力が起こらない……といったメンタルの不調を訴える患者さんが増えてきていますね」

 

鍼心堂・くすりのしんしん堂院長の沼口樹也先生がそう実感を語るように、外出を自粛する生活が続き、運動不足・活動量不足になるなかで、気持ちが塞ぎがちな人が増えているようです。

たしかに滅入ってしまう気持ちはわかります……。外は天気がよいですしね。店舗を開業して生計を立てている人は特に、精神的な負担もかなり大きいといえるでしょう。

 

厚生労働省も「健康日本21」のなかで、下記のように述べています。

「身体活動量が多い者や、運動をよく行っている者は、総死亡、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いこと、また、身体活動や運動が、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められている」

【参考記事】厚生労働省:健康21>身体活動・運動

 

また、成人については、下記の3つを推奨しています。

 

1)身体活動・運動に対する意識の向上
2)日常生活における歩数の増加(1日1万歩以上)
3)運動習慣者の増加

 

たたでさえ、運動不足が問題視されているなか、在宅での時間が増えて、身体活動量が低下すると、身体だけではなく精神にもダメージを受けるのは、むしろ当然のことだといえるでしょう。

 

大腰筋と感情の関係

「大腰筋は感情と密接に関係がある」

運動科学とダンスの専門家で、ピラティスとヨガの認定インストラクターである、スタウガード=ジョーンズ・ジョアン氏は著書でそう述べています。(※6.)

鍵となるのは「第2の脳」とも呼ばれる腸管神経系です。腸管神経系は、食道から肛門まで、切れ目なく広がっている神経叢という神経の網目のことで、副交感神経系と交感神経系から情報を受け取っています。

 

人間は緊急時に、闘争もしくは逃走するために交感神経が優位になります。一方で、非緊急時には休息と消化を促すための非交感神経系が優位となります。

この腸管神経系、副交感神経系、交感神経系の3つの神経系が、本人の意思に基づかずに身体の臓器と筋肉を制御することになります。身体の中心に深く位置する大腰筋は、とりわけ神経系、つまり、感情の影響を受けやすいと、ジョアン氏はいいます。

 

大腰筋の解放(リリース)がどれほど感情に影響するのかは、まだわかっていないことは多いですが、体と心が互いに影響を与え合っているという点では、前述した厚生労働省の指針と共通しています。

沼口先生は、鍼灸院を開業しながら、精神科の医療施設で介護も行っています。臨床を通して「身体と心はひとつ」と日々実感しているといいます。

 

「心が奮わなければ、食欲不振や睡眠の質の低下などにもつながります。また、どうしても精神的に落ち込むと、体もこわばりやすくなります。ただでさえ在宅ワークが続くと、関節の可動域が狭まりやすくなります。カラダの運動量が下がり、さらに気分まで塞ぎがちになると、筋肉の収縮はさらに悪化するという悪循環になってしまうんです」

 

今回も沼口先生に、大腰筋のエクササイズを実演してもらいましょう。

 

大腰筋へのエクササイズ ~ローマン・チェア・ロテーショナル・クランチ~

 

「背もたれのない椅子やベンチに座り、まずは。足を床で安定させましょう。そして、背を丸めた姿勢をとって、上半身が床と平行に近づくまで、ゆっくりと仰向けになっていってください。そのまま数秒キープして、またもとに戻していきます。このエクササイズでは、大腰筋以外に、同じくインナーマッスルである骨盤底筋も鍛えられますよ」

 

実際にやってみると、以前の記事で紹介したエクササイズ「ウインド・ミル」よりも、けっこうキツイ……。難しい人は、腹筋を鍛えてから、行うとよいとのこと。

今回はややハードなエクササイズを紹介しましたが、くれぐれも無理はしないようにしてください。大切なのは、少しでもよいので、毎日、続けることですから。

 

もし、長引く自粛生活のなかで、なかなか元気が出てこないとしても、それは状況を考えれば、むしろ自然なことです。

普段、意識することも、動かすこともなかった、身体の中央で、かつ、深部に位置する大腰筋。日々のエクササイズで、少しでもゆるめてあげることで、心身の緊張もゆるめていきましょう。

 

【監修】沼口樹也先生(鍼心堂・くすりのしんしん堂)

【取材協力】鍼心堂・くすりのしんしん堂宮崎県西都市上町1-53/TEL:080-2402-1109

【参考論文・参考文献】

1.厚生労働省. 健康日本21 3.休養・こころの健康

2.U.S. Department of Health and Human Services: Physical Activity and Health. A Report of the Surgeon General, International Medical Publishing, 1996

3.厚生省保健医療局健康増進栄養課: 健康づくりのための年齢・対象別身体活動指針,1997

4.Province MA, et al: The effects of exercise on falls in elderly patients. A preplanned meta-analysis of the FICSIT trials. JAMA 1995;273:1341-1347

5.Hakim AA, et al: Effects of walking on mortality among nonsmoking retired men. N Engl J Med 1998;338:94-99

6. Jo Ann Staugaard-Jones.The Vital Psoas Muscle: Connecting Physical, Emotional, and Spiritual Well-Being. North Atlantic Books 2012.